玖拾参) 月読 ページ29
A「今殺していないなら、きっと星樺妃はこの先もお母様を殺さないはず」
白鈴「うん...」
土方「何故だ」
A「だってお母様は特別だから」
雪村「特別...??」
A「お母様は月読(ツクヨミ)様の祝福を受けているの」
原田「月読って言ったら、あの神話に出てくる神のことか??」
永倉「俺も本で読んだことあるが、実際に居るってのか」
Aは涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げる
着物の袖で目元をゴシゴシと拭くと一息ついて再び前を向いた
A「月読様はね"月読命"(ツクヨミノミコト)といって月を護る神様なの」
A「でも初めの頃はその月読様を私達の国でも信じられていなかった」
A「多分皆が思っているみたいに、月の民も月を神格化させた幻だと思ってたんだよ」
雪村「でもそれは本当に存在するってこと....??」
A「そう」
A「それが証明されたのはお母様が"授かりの儀式"を行った時だった」
藤堂「授かりの儀式..??」
A「授かりの儀式っていうのは、御三家の当主である妃の中から正室を決めるときに、王家の力を妃に渡す儀式なの」
A「御三家はそれぞれ自分達の龍を受け継いでいるって話はしたでしょ??」
近藤「たしか...黄金と白銀と...」
白鈴「淡藤色だよ」
A「御三家にそれぞれの龍がいるように、月ノ宮にも王家としての龍が存在するの」
A「その龍の名は、"水月龍"(スイゲツリュウ)」
A「儀式は姫が三日三晩舞い続けることで成立する」
雪村「三日三晩って....」
斎藤「普通であれば不可能に等しいな」
A「でもお母様は止まることなく三日の間舞い続けた」
A「舞が終わった時、舞台の周りに蜃気楼が出て、満開の河津桜が現れたの」
A「その時、羽衣を纏った天女が空から現れてお母様の額に口付けをした」
永倉「天女ってまさか」
A「そう そのまさか、その天女が月読様だったの」
A「それ以来、お母様の持つ神力はとても強いものになった」
A「不死の泉のように、無くなった力は再び溢れて元に戻る」
A「月ノ宮でも力が尽きれば命も尽きる、でもお母様は力が無くなることは無い」
A「つまり、お母様は力を吸われても死ねないってこと」
話終わる頃には、再び涙が込み上げて上ずった声になる
広間にいる者たちはあまりの衝撃に声を発せずにいた
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作者名:雪姫華-yukika- | 作成日時:2024年2月21日 13時