捌拾伍) 簪 ページ19
店主｢貴女は本当に美人さんね｣
帯を結ぶAを見ながら店主が言った
A｢...へ??｣
Aは予想外の言葉に思わず間抜けな声が出てしまう
店主｢新選組にとんでもない美人がいるって町の人たちは噂してるわ｣
A｢そう..なんですか...??｣
店主｢ふふふっ、そういうことは当の本人は気が付かないっていうけど本当なのね｣
A｢そう言われても自覚ないんですよ...｣ﾊﾊｯ
困ったように笑うAに店主は目を細めて微笑んだ
店主｢それに、貴女に助けられた人も多いわ｣
店主｢その中に私のお店のお得意様もいらっしゃるのよ｣
店主は笑顔を崩さぬままさらに続けた
店主｢もっと自信を持って｣
店主の言葉にAの心は再び温かくなる
A｢店主さんはお母様みたいに温かい人です｣
A｢母は今....."遠いところ"にいるので...｣
店主｢そうなのね...お店にはいつでもいらっしゃい｣
店主｢用事がなくても大歓迎よ｣
A｢ありがとうございます｣ﾆｺｯ
店主｢さぁさぁ、お連れの方が待っているわ｣
そう言って店主は部屋の戸を開ける
A｢一くん、おまたせ｣
Aが声をかけると、斎藤は静かに立ち上がった
A｢どう??｣
斎藤｢...｣
A｢あれ??一くん??｣
店主｢あらあら、見とれちゃったかしら｣ﾆｺｯ
A｢えっ!?｣
斎藤｢そ、そのようなことは無いが...｣
A｢無いが...??｣
斎藤｢その...似合っている｣
顔を赤くしながら言う彼にAはにっこりと笑った
A｢ありがとう｣ﾌﾌｯ
A｢さて、行こうか｣
A｢今回も本当にありがとうございました｣
Aは店主に向き直るとぺこりと頭を下げた
店主｢いいのよ、こちらこそありがとうございます｣
店主｢お代はおまけで少し引いておきますよ｣
店主｢あっ、それから...｣
店主は何かを思い出したように店の奥へと消えていく
暫くして金色の何かを持って戻ってきた
店主｢これを｣
A｢わぁ、綺麗な簪｣
A｢これは??｣
店主｢その着物に買い手がついたら、一緒に渡そうと決めてたものなの｣
店主が持ってきた金の簪は、花が細工されていた
この着物と一緒に渡すということは
簪に細工された花も月下美人なのだろう
細かく丁寧につくられた簪は
光を反射してキラキラと輝いていた
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作者名：雪姫華-yukika- | 作成日時：2024年2月21日 13時
