陸拾漆) 赤月 ページ50
鈴「あっ、あのね....」
ユラッ
鏡がまた水面のように揺れる
鈴「ほ......はね、お....まは...きて...」
鈴の声は途切れ途切れになる
A「待って聞こえない!!」
焦ったように鏡を持ち上げる
その様子に鈴は残念そうに手を振った
"ま・た・ね"
鈴が口を動かしたすぐ後、
鏡は焦った表情を浮かべるAを映していた
時間切れだ
A「...あと少しだったのに」
鈴の焦った様子から、
Aへ伝えなければならないことがある
というのが分かったからこそ尚更もどかしさを感じる
連絡手段を知ったからといって
こちらからの連絡が向こう側に見つかれば
鈴も命が危ういであろう
A「はぁ、続きはいつ聞けるんだろう...」
そう言って鏡を元の位置に直しながら肩を落としたのだった
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〜数刻後〜
暫くして千鶴が戻ってきた
それからは伊東についてなどの今日の出来事を話した
だいぶ話し込んでしまったため、
二人の時間はあっという間に過ぎ去った
そして、
「明日も早いから」
と布団を敷き、現在に至る
A(はぁ...今日も色々あったな)
A(鈴の話も....きになる...し)
スゥ
Aは瞳を閉じると、直ぐに眠りへと落ちていった
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Aが眠りへ落ちた後も
"昼間の件"で千鶴はなかなか寝付けないようであった
その時、
「薬でもなんでも使ってもらうしかないですね」
という沖田の話を思い出す
バサッ
雪村「薬ってなんだろう...」
そう呟き、千鶴は袴に袖を通し外出の準備をする
その時、廊下を歩く足音が聞こえた
雪村「..?!」
千鶴はAを起こさないように静かに戸を開けた
そして足音の方へ視線を向ける
そこには山南が居た
山南は裏口から屯所の外へと出て行く
不審に思った千鶴はその後をついて行くことにしたのだった
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A「...」
パチッ
A「まだ暗い....途中で起きるなんて久しぶり」
A「喉乾いたな」
そう言ってAは起き上がる
そして
(千鶴を起こさないように...)
と立ち上がりながら千鶴の布団へと目を向けた時
A「...千鶴??」
千鶴は布団に居なかった
A(こんな時間に何処に...)
戸を開けて外を確認する
ゾワッ
その時、Aを嫌な予感が襲う
A「赤月...」
その夜は赤い満月が妖しく輝いていた
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まるで"不吉の前兆"を告げるかのように
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作者名:雪姫華-yukika- | 作成日時:2024年2月6日 15時