陸拾参) 堪忍袋 ページ46
伊東「しかし、物事を押し進めるには強引かつ大胆な策も必要ですわ」
伊東「守りに入ろうとするお気持ちは分かりますけど」
山南「守り...??」
伊東「その左腕は使い物にならないそうですが」
伊東の言葉にその場が凍りつく
予想外の攻撃に山南は目を見開きしばらく固まった
伊東「剣客としては生きられずともお気になさることはありませんわ」
伊東「山南さんはその才覚と深慮で新選組を十分に助けてくれそうですもの」
土方「今のはどういう意味だ伊東さん!!」
怒りを露わにした土方が声を荒らげた
土方「あんたの言うように山南さんは優秀な論客だ」
土方「けどな、剣客としてもこの新選組に必要な人なんだよ!!」
山南「土方君、私の腕は...」
そう言うと山南は左腕を握った
伊東「あら、私としたことが失礼致しました」
伊東「その腕が治るのであれば何よりですわ」
プチンッ
Aの中で何かが切れる音がした
A「伊東さんは本当に優秀な論客ですね」ニコリ
伊東「あら、ありがとうございます」
A「ただ、その巧みな話術がいつか命取りになりそうで心配です」
伊東「どういうことかしら...??」
A「そのままですよ」
A「優れたものは凶器にもなり得るのですから、自分の言葉には責任を持たないと」
Aは伊東に微笑みかけたまま続ける
A「西本願寺に屯所を構えたとして武力行使をしない相手であれば、話術で勝てば良いだけの話」
A「強引に押し進めるのも大切ですが、その中にも最悪の場合においての結果を想定しなくてはいけませんよ」
A「まぁ、優秀な伊東はそこもしっかりとお考えでしょうが」
A「山南さんはそれを言っていたんですよね??」
山南「...はい、」
伊東が反論の余地がない程のAの言葉巧みな話に
その場にいる全員が呆気にとられていた
伊東「あなた....」
A「あぁ、申し遅れました」
A「私は礼龍寺Aです」
伊東「女性のあなたが何故ここに」
土方「こいつは新選組に隊士として所属している」
伊東「まぁ、女性の隊士とは珍しいですわね」
・
・
・
ゴホンッ
近藤は咳払いしてから口を開いた
近藤「色々意見が出たが、ここは一つ西本願寺で進めてみよう」
近藤がそう言った時、山南は静かに席を立った
スッ
山南が戸を開けた先には千鶴が居た
山南は千鶴にぎこちなく微笑みを向ける
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作者名:雪姫華-yukika- | 作成日時:2024年2月6日 15時