陸拾)言伝 ページ43
井上「今日も雪が降っているし、冷えるね」
A「えぇ、でも雪は好きです」
A「黒いもの全てを真っ白に覆い隠して、綺麗なものだけを見ていられるような気がして...」
井上「そうだね」
井上「...本当に全てを綺麗にしてくれたらいいのだけれど」
そう言う井上の瞳はどこか切なげで
Aには見えない何かを捉えているようであった
A「井上さん...」
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雪村「あれ?? 井上さんとAちゃん??」
A「千鶴!!」
井上「雪村君か」
井上「雪村君も一杯どうかな??」ニコッ
雪村「...!! はい!! お茶持ってきます」
千鶴は井上の言葉に満面の笑みを浮かべると
勝手場へと走っていった
A「千鶴は井上さんのことが大好きですね」
A「もちろん私もですよ」
井上はAの言葉に
「おやおや」
と照れたように笑った
A「私と井上さんは二十も離れていないですけど、いつも
私のことを父親みたいに包んでくれるんですよ」
A「あと、近藤さんも!!」ニカッ
井上「近藤さんには敵わないよ」ハハッ
雪村「お待たせしました!!」
A「おかえり千鶴」
雪村「お隣、失礼します」
そう言うと千鶴は井上の隣へ腰を下ろした
井上「君達が来てからもう一年以上になるか」
A「ほんとにあっという間」
雪村(そうか、もうそんなに経つんだ...)
井上の言葉に千鶴の表情が暗くなる
きっと父親である綱道の手がかりが
思うようにつかめないでいるからだろう
行方の分からない父親を考え、
気持ちが沈むのは当然のことだ
井上「ありがとう」
ふと井上が口を開いた
井上「客人の君達に色々と雑務を任せてしまって」
井上「実際、助かっているよ」
千鶴「お役に立っているのなら嬉しいんですけど...」
A「立っているとも!! 家事も料理も分からない私に色々教えてくれたのも千鶴だし」
A「ありがとう」
井上とAからの感謝の言葉に千鶴は頬を赤らめた
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井上「そう言えば礼龍寺君、土方君からの言伝で」
井上「"暫くは女中として屯所で生活して欲しい"とのことだ」
井上「但し、緊急事態の対人戦などには加勢して欲しいと言っていたよ」
A「確かに初対面で女ってバレたのに男装したら変に捜索されそう」
井上「隊士達には土方君から事情を伝えるそうだから安心していいそうだ」
A「分かりました」
A「ありがとうございます」
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作者名:雪姫華-yukika- | 作成日時:2024年2月6日 15時