伍拾玖) 鍛錬 ページ42
雪が辺りを白く覆い尽くしている
秋が過ぎ去り、季節は冬を迎えていた
A｢うぅ、寒い...｣
Aが腕をさすりながら部屋の戸を開けた
A｢さて、今日もやりますか｣
そう言うと縁側で正座をする
そして、胸の前で指を組んだ
ゆっくりと瞼を閉じ自身に流れる力の流れを感じる
これは"仲間を守る剣になる"と決めた日から続けている鍛錬だ
この鍛錬では"三つの効果"が期待できた
一、身体を流れる力の流れを速くし、満遍なく行き渡らせるこ とで五感を最大限に研ぎ澄ますことができることに加え、失った力の増強
二、一箇所に集中させることで爆発的な力の発揮
三、一時的な治癒力の強化
禁門の変から約半年、
この鍛錬を続けてきたAの力は驚異的な速さで
鍛え上げられていた
A｢ふぅ...疲れた｣
Aは閉じていた目を開け、脚を崩す
空を仰ぎながら吐き出した息は白く、
空気の冷たさにAの頬や鼻先は薄らと赤くなっていた
A｢黒蓮に取られた力位は取り戻せたかな...｣
そう言って空から握った拳へと視線を移す
A｢でも、鍛錬で力を取り戻せるとは思ってなかったなぁ｣
A(力は生まれつき持つもので変わらないはずだし....)
A｢まぁ、奇跡的な体質ってことか｣
A｢よしっ休憩は終わり!!｣
そう言うとAは再び目を閉じて鍛錬を始めた
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??｢本当に毎日熱心に鍛錬しているね｣
不意にかけられた声にAは目を開いた
A｢あっ、井上さん｣
井上｢すまない、邪魔をしてしまったかな｣
声の主は井上であった
井上は朗らかな笑みをAへ向けている
A｢そんなことないですよ、もうそろそろ終えるところでしたから｣ ﾆｺｯ
Aが隊士達の中でも特に信頼しているのが井上だ
新選組へ来て一番初めに良くしてくれたのが
井上であったからだ
井上は誠実でありながら人当たりもよく
隊士達からの信頼も絶大であった
A｢井上さんならいつでも大歓迎ですよ｣
井上｢それは嬉しいね｣
井上｢遠くから礼龍寺くんが鍛錬しているのが見えてね｣
井上｢つい声をかけてしまったんだよ｣
井上は恥ずかしそうに笑った
井上｢隣、いいかな｣
A｢もちろんです｣
Aの言葉を聞き、井上はAの隣へ静かに腰を下ろした
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作者名：雪姫華-yukika- | 作成日時：2024年2月6日 15時
