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参拾玖) あの日・壱 ページ11

広間には土方と山南、そして幹部達がいた



スッ



静かに戸が開く

部屋へと入ってきたのは千鶴であった



雪村「お薬です」



山南「おや、私も飲むんですか??」

山南「左腕の傷はもう塞がっていますよ」



雪村「でも土方さんが山南さんにもって」



沖田「山南さん、諦めましょ」



沖田は薬包紙から薬を口へと運んだ

それを見た山南は静かに微笑む



山南「副長命令とあらば」



そう言って山南も薬を口へと運んだ



雪村「このお薬って特別に処方されたものなのですか??」



雪村は石田散薬と書かれた紙を見て言った



原田「石田散薬か??」

原田「まぁ、特別っちゃ特別だな」



沖田「土方さんの実家で作ってるんだよ」



藤堂「切り傷打ち身にどんな痛みも飲めばぴたりと治るは石田散薬!! 」

藤堂「本当なんだかどうだか」



そう言いながら藤堂も薬を口へと運ぶ



藤堂「うわっ、まず」



薬包紙から口へと運ばれた黒い粉を見る限り
苦そうな薬である

藤堂の言葉を聞き土方は静かに拳を握る

そしてその拳を見せながら言った



土方「試してみるか??」



そう言う土方の顔は眉間にシワが寄り、目を鋭くさせた
鬼の形相であった



藤堂「うわっ!! 勘弁してよ!!これ以上傷が増えちゃシャレにならねぇよ.....」



その様子を見て広間は笑いに包まれた



雪村「では、私はAちゃんの様子見てきます」



千鶴の言葉で広間は静寂に包まれた

皆先程とは打って変わり表情が暗くなる



土方「Aはまだ目を覚まさねぇのか」

雪村「はい...」



原田「あの時俺がすぐに動けてれば..」

雪村「いえ、私が直ぐにAちゃんの言ったことを...」

沖田「僕もあの時の一瞬気が緩まなければ加勢できたのに」




池田屋事件からは数日が経つ

Aはあの日倒れて以降、目を覚ましていなかった















A「いつか止まるから大丈夫.....」



ドサリ



そう言って床へと崩れ落ちたA



原田「おい!!A!! しっかりしろ!!!!」

雪村「Aちゃん!!」



ゴフッ



Aが吐血する

口元から血が滴った


その様子を見て千鶴は絶叫する



永倉「おい!!大丈夫かって...」



遅れてやってきた永倉はその光景に目を見開いた

そして一階へと叫ぶ



永倉「だれか!! 布を持ってこい!! 早く!!!!」



永倉の緊迫した声を聞き、土方と近藤も二階へとやって来た

参拾玖) あの日・弐→←参拾捌) 池田屋事件・終



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作者名:雪姫華-yukika- | 作成日時:2024年2月6日 15時

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