256話 小さな恋8 ページ6
「クロワッサンサンド二つ出来たよ」
「はいはい、運びまーす」
料理を手に二階へ向かう雅紀。
アトリエ近くのテーブル席に華と司。
不安だった華の表情は変わっていた。
可憐な恋する乙女。
「お待たせいたしました」
料理をテーブルに置く雅紀に華はありがとうと声をかける。
「司君に自分の気持ちを話しました。彼も同じ気持ちで……不安だったみたい」
でも同じ気持ちという事が安心になった。
「何か起きても二人なら大丈夫って思いました。先ほどはありがとう」
「いえ。では失礼します」
テーブルを離れると背後に人の気配。
振り向けば智がいた。
助かったという表情を浮かべ、無言で一階へ指差しをする。
階段を降りた二人。
「喉乾いた〜なんか飲み物くれ」
智は二階の雰囲気にアトリエから出られなかったという。
「ふーっ生き返るわぁ」
「うちの華がすいません」
恐縮の青木。
「気にしないでいいよ。二人とも思いつめた感じだったから話せて良かったんじゃない？」
「精神的負担が軽くなればいいんだけど……まだしばらくバタバタが続くであろうし」
青木の溜息。
智は外の記者らしい人陰に目を細める。
その横で翔も考えていた。
「中にはマナーを守らないメディアもいるから俺たちも気をつけないと。客として店内に入られたら……」
二人を会わせてあげたい思いはカフェの人間も青木も一緒。
メディアに恋をつぶされないように皆で守ろう。
そう思う。
「……次の仕事の時間だな」
青木が華を呼びに行こうと立ち上がる。
と……司と華が二階から降りてきた。
司の後ろをついていく華。
階段が濡れていたのかヒールが滑った。
態勢を崩した体を司が抱き支える。
それはまるで王子様に守られるお姫様のよう。
周りの客人は驚きながらもその光景にうっとりしていた。
「あ、ありがとう……」
「気を付けて」
エスコートされ階段を降り終えた。
「心臓が止まるかと思ったぞ。気を付けてくれ」
「ごめんね、青木さん」
会計を済ませると青木に連れられ華は次の仕事へ向かう。
小さく司に手をふりながら。
司も裏口からパン屋へ帰っていく。
階段の出来事が……二人の恋を揺るがすことになろうとはこの時誰も気づいていてなかった。
数日後に週刊誌に一つのスクープが掲載される。
『女優の華、お相手はカフェ勤務の元モデル。昼間に堂々とカフェで逢瀬の時間か?』
華の恋人の正体が記されていた。
何故か相手が雅紀で……。
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むつき(プロフ) - だんぼさん» おひさしぶりです！今回のお話は重くてなかなか文章が出てきませんでした。そんな優しい言葉を言われたら泣いちゃいます。ありがとうです。これからもがんばります。 (2014年4月12日 23時) (
レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
だんぼ(プロフ) - むつきさん、お久しぶりです。潤くんのお話…切なかった…白石さんの記憶を思うと… そしてそれを感じてしまう雅紀と支えるにの…5人の絆と優しさに 感動しました！ むつきさんのお話って本当に温かくて、後からじんわり効いてくる…そんな感じですね… (2014年4月12日 13時) (レス) id: 5df5e1bd71 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - みのりさん» はじめまして。読んで頂き嬉しいです。ほっこりが伝えて行けるようにこれからも精進致します。 (2014年4月9日 23時) (レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - ケイさん» すべてを受け止める優しさは強さでもありますよね。彼にはそんな力があると思います。コメントありがとうございます。 (2014年4月9日 23時) (レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
みのり - 初めてコメします。このお話し大好きです。5人のホッコリ感もとっても素敵です。ずっと続けて下さい。 (2014年4月9日 10時) (レス) id: 5959279da5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むつき
| 作成日時：2014年3月8日 19時
