288話 寄り添う親子2 ページ38
整備場の入り口で小さな女の子の声がする。
「翔兄ちゃんじゃん」
朔太の一人娘亜子がランドセルを背負って立っていた。
学校帰りのようだ。
「亜子ちゃんこんにちは」
「おかえり亜子」
「こんにちは、それとただいま」
ショートヘアで頬が赤い可愛い子。
小学3年生。
「お腹すいた父ちゃん」
「おやつ……何もないぞ」
「え〜！なんで何もないのぉ。父ちゃんって釣った魚に餌をあげないタイプ？」
父親及び大人たちが噴き出し笑う。
「どこでそんな言葉を覚えた？」
「お・な・か・す・い・た！」
リュックの中身を思い出して翔は紙袋を取り出す。
「これ良かったらどうぞ」
「何？」
紙袋の中は焼き芋。
「焼き芋屋さんが目の前にいてね。匂いにつられて買ったんだ」
やった！と両手を上げて喜ぶ。
「悪いですよ。こら亜子、夕飯まで我慢だ」
「いいですよ。3本入っていますからみなさんで分けて食べてください」
「櫻井さんが食べようと買ってきていたんじゃ……」
「いいんです。カフェに帰れば何かしら食べるものはありますから」
それでは自転車をお願いしますと頭を下げる。
「ありがとう！バイバイ翔兄ちゃん」
「またねバイバイ」
工場を出た翔はカフェへ足を向ける。
と、足を止めた。
建物の影に隠れるようにして工場を見る人。
背の高い中年の男が立っていた。
翔に気が付くと去ってしまった。
「？」
気にとめつつもカフェに帰った翔。
食材の入ったリュックを潤に渡す。
「ありがとう翔さん」
「おっかえり〜翔ちゃん」
潤の隣に立ってリュックの中を覗き込む。
「……あれ？」
雅紀の鼻が動く。
「焼き芋の臭いがする……」
「すごい嗅覚だな。実は買ってきた」
「マジで!!」
「お腹を空かせた可愛い子にプレゼントしちゃったけど」
自転車のパンクの事を話す。
「愛車が入院か〜」
「明日には退院だよ」
「じゃ、明日快気祝いね」
「ただ飲みたいだけだろ」
潤の的確な突っ込み。
ひゃははと笑い声をあげる雅紀。
カランとドアベルが鳴り客の来店を告げる。
「さ、働いて」
「はぁーい」
何気ない一日。
それは何よりも大切で尊いものであるのだと……思いかみしめることになる。
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むつき(プロフ) - だんぼさん» おひさしぶりです！今回のお話は重くてなかなか文章が出てきませんでした。そんな優しい言葉を言われたら泣いちゃいます。ありがとうです。これからもがんばります。 (2014年4月12日 23時) (
レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
だんぼ(プロフ) - むつきさん、お久しぶりです。潤くんのお話…切なかった…白石さんの記憶を思うと… そしてそれを感じてしまう雅紀と支えるにの…5人の絆と優しさに 感動しました！ むつきさんのお話って本当に温かくて、後からじんわり効いてくる…そんな感じですね… (2014年4月12日 13時) (レス) id: 5df5e1bd71 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - みのりさん» はじめまして。読んで頂き嬉しいです。ほっこりが伝えて行けるようにこれからも精進致します。 (2014年4月9日 23時) (レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - ケイさん» すべてを受け止める優しさは強さでもありますよね。彼にはそんな力があると思います。コメントありがとうございます。 (2014年4月9日 23時) (レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
みのり - 初めてコメします。このお話し大好きです。5人のホッコリ感もとっても素敵です。ずっと続けて下さい。 (2014年4月9日 10時) (レス) id: 5959279da5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むつき
| 作成日時：2014年3月8日 19時
