287話 寄り添う親子１ ページ37
ランチのピークが過ぎて夕方が近づく時間。
店内に珍しく客がいない。
「ひと段落ついた感じだね」
カウンター席に座り休憩する雅紀。
和也は仕事のため先ほど家に戻り、智はアトリエで朝から絵を描いている。
一階には雅紀と潤だけ。
「翔ちゃんは潤君？」
「買い物を頼んだ」
「お使い翔ちゃんか」
潤が雅紀の隣に座る。
手には二つのコーヒーを持って。
「どうぞ」
「ありがとう」
ポケットからハンドクリームを取り出した潤。
荒れた手に塗る。
「それ……」
白石からもらったもの。
先日、とても効くからと置いていった。
彼女からのプレゼント攻撃の時は何一つ受け取らなかった潤だったが。
「正気に戻ったし、これは詫びの気持ちだから受け取った」
ほらっと雅紀の手を取るとクリームをつける。
「効きそうだねこれ」
手をすり合わせて塗る。
「翔ちゃんどこまでお使いに行った？」
「△△商店」
「あそこ遠いよ」
「愛車で行ったからもう戻ると思うよ」
「そっか」
二人がクリームを手に塗りこんでいる丁度同じ時間。
翔は愛車にまたがり、街中を走っていた。
ペダルを一生懸命に踏んで。
そう、愛車とは赤い自転車。
お気に入りである。
買い物専用リュックを背負い、風を楽しんでいた。
カフェの近くまで来た時だ。
スムーズに走っていた自転車が重くなり始めた。
「ん？」
やがて後輪からガタンガタンと衝撃が始まり、慌てて止める。
「うわっパンクだ〜」
こうなってしまっては走行は出来ない。
「マジか〜」
愛車の一大事。
すぐにお抱えメンテサービスへ直行。
古い商店街を抜けると一軒の整備工場。
自転車屋ではなく自動車整備工場。
「朔太さーん」
「はーい。お、翔さん」
「パンクしたんだよ〜頼むわ」
「後ろタイヤだな。今日は混んでいるんだ。明日の夕方まで預かってもいいか？」
「すぐじゃなくてもいいよ。明日の夕方ね。頼みます」
修理中の自動車に並べて停める。
「おいおい、うちは自転車屋ねーぞ」
作業員が笑いながら冷かしてくる。
これはいつもの会話である。
「自転車も車ですよ〜」
「ハハハ、オイル交換もするか？」
「車内清掃もお願いしますね」
笑い声が響く。
近所に自転車屋がない翔は整備工場に愛車のメンテをお願いするのである。
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むつき(プロフ) - だんぼさん» おひさしぶりです！今回のお話は重くてなかなか文章が出てきませんでした。そんな優しい言葉を言われたら泣いちゃいます。ありがとうです。これからもがんばります。 (2014年4月12日 23時) (
レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
だんぼ(プロフ) - むつきさん、お久しぶりです。潤くんのお話…切なかった…白石さんの記憶を思うと… そしてそれを感じてしまう雅紀と支えるにの…5人の絆と優しさに 感動しました！ むつきさんのお話って本当に温かくて、後からじんわり効いてくる…そんな感じですね… (2014年4月12日 13時) (レス) id: 5df5e1bd71 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - みのりさん» はじめまして。読んで頂き嬉しいです。ほっこりが伝えて行けるようにこれからも精進致します。 (2014年4月9日 23時) (レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - ケイさん» すべてを受け止める優しさは強さでもありますよね。彼にはそんな力があると思います。コメントありがとうございます。 (2014年4月9日 23時) (レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
みのり - 初めてコメします。このお話し大好きです。5人のホッコリ感もとっても素敵です。ずっと続けて下さい。 (2014年4月9日 10時) (レス) id: 5959279da5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むつき
| 作成日時：2014年3月8日 19時
