283話 書き換えた記憶16 ページ33
白石の子が眠る墓の前で翔は上里と出会った。
今、白石がどんな状態であるのか翔から聞くと墓を手で擦り始めた。
「……まだ探しているんだな。ここにいるというのに」
カフェに上里を連れて来たのは、彼自身が望んだから。
白石の目を覚まさせてやりたいと願った。
泣き続ける白石に上里は深く頭を下げる。
「あの日赤ん坊を一人にさせていなければ……白石がこうなったのは俺の責任でもある」
幸人が亡くなった理由は乳児が突然息を引き取ってしまう病気のせい。
白石がそばにいても同じ未来だっただろう。
けれど腕の中で看取ることが出来ていたら現実を受け止められた。
子供を失った白石は酷く悲しんだ。
49日が過ぎ納骨をすませると子供を探すような発言が出るようになった。
幸人は生きていると、どこに連れて行ったのかと。
「事務所も私も白石のやりたいようにさせていました。探すことを止めることも亡くなっていると諭すこともしなかった」
子供が生きていると記憶を書き換えてしまった白石に真実を伝え、もう一度悲しみを与えてしまうのが不憫でならなかった。
「けどちゃんと現実を受け止めさせていたら28年も探し続けることも皆さんにご迷惑をかけることもなかった」
白石が上里の言葉に顔を上げる。
「……上里さん……あの子は死んでしまったの？」
「そうだよ。見送っただろう？一緒に」
「小さな……お骨でした……」
「そうだったな」
「……どうしよう上里さん……私、ずっとあの子の事を一人にして……一度もお墓にも行っていないわ」
ずっと現実から目を反らし、まったく違う方向を向き幸人を探していた。
「大丈夫だよ、ねっ翔ちゃん」
ずっと手を握っていた雅紀が微笑む。
「そうだ。上里さんがずっとお墓に会いに行っていたみたい」
母に会えない幸人を不憫に思い、月命日や、命日に墓地を訪れていた上里。
事務所を退職した今も毎月。
「こんなことしか出来なかった」
「ずっと？ずっと会いに行ってくれていたの？」
小さく頷く。
潤は目を赤くさせて雅紀の隣へしゃがむ。
「……これからは白石さんが会いに行ってあげて下さい。息子さん待っています」
「は……い……はい」
現実に戻ってきた白石は母親の顔をしていた。
カフェから帰る白石と上里。
並んで見送る一同。
二人の姿が見えなくなるまで門の前にいた。
「……行ったな」
「そうだね智君」
「さて……潤君はあーばちゃん、翔君はニノね」
仲良く並んで立っていた二人の体が後ろへ倒れこんだ。
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むつき(プロフ) - だんぼさん» おひさしぶりです！今回のお話は重くてなかなか文章が出てきませんでした。そんな優しい言葉を言われたら泣いちゃいます。ありがとうです。これからもがんばります。 (2014年4月12日 23時) (
レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
だんぼ(プロフ) - むつきさん、お久しぶりです。潤くんのお話…切なかった…白石さんの記憶を思うと… そしてそれを感じてしまう雅紀と支えるにの…5人の絆と優しさに 感動しました！ むつきさんのお話って本当に温かくて、後からじんわり効いてくる…そんな感じですね… (2014年4月12日 13時) (レス) id: 5df5e1bd71 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - みのりさん» はじめまして。読んで頂き嬉しいです。ほっこりが伝えて行けるようにこれからも精進致します。 (2014年4月9日 23時) (レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - ケイさん» すべてを受け止める優しさは強さでもありますよね。彼にはそんな力があると思います。コメントありがとうございます。 (2014年4月9日 23時) (レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
みのり - 初めてコメします。このお話し大好きです。5人のホッコリ感もとっても素敵です。ずっと続けて下さい。 (2014年4月9日 10時) (レス) id: 5959279da5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むつき
| 作成日時：2014年3月8日 19時
