279話 書き換えた記憶12 ページ29
自分の子供ではない。
拒絶された感覚に陥った白石が、逃がすまいと潤の腕を掴んだ。
女性とは思えない力。
痛みで顔が歪む。
「何してんだ！」
慌てて智が白石の手を解こうとする。
が、掴んだ手はびくともしない。
「……駄目……だ！」
肩に乗っていた雅紀の温もりが不意に無くなった。
和也の後ろにいたはずの雅紀が目の前にいる。
潤と白石の間に入った。
「……ちゃんと潤君を見て。痛がっているよ」
「……」
そっと白石の手の上に自分の手を重ねる。
「白石さん、潤君を苦しめないで」
雅紀の声が届いたのか手が緩んだ。
するりと腕が解かれ、智が潤を和也のそばへ移動させる。
距離をとる形。
和也は潤の袖をまくりあげた。
赤く手形が付いている。
「大丈夫J？」
「大丈夫」
白石の声が震えていた。
私の子を盗らないでと。
ゆっくりと潤を見て
「おいで……」
と手を差し出す。
「あなたのママよ。もうはなさないから」
違うと首を横に振る潤。
「俺の母はあなたじゃない」
「私よ」
そばにいる和也と智をキッと睨みつける。
「その人たちがいけないのね？その人たちがママから遠ざけようとしているのね？」
睨み返す智。
「ママが追い払ってあげるわ」
「……遠ざけているのは白石さんの方だよ」
白石の手を握ったまま雅紀は悲しそうに見つめる。
「……どうしてちゃんと見てあげないのかな？」
「……あなたも私からあの子を取り上げようようとするのね」
振り払われる手。
「ちゃんと見てあげて下さい。あなたの息子さんを」
再び潤に目を向けようとする白石の視界に雅紀は体をずらし入る。
「違う……潤君じゃない」
「あの子よ。私の子」
「違うよ。白石さん……ちゃんと向き合って。逃げちゃ駄目だ」
「逃げる？」
店のドアが開く。
「遅くなったよ」
翔が外出から戻ってきた。
店内の様子にこれまでの状況を把握する。
「遅いですよ！」
和也の非難の声。
「お客さんを連れて来た、それで遅くなった」
後ろを振り返り招き入れる。
60歳を過ぎたろう男性だ。
「上里さん……」
男性の名前を呼んだのは白石だった。
小さく上里と呼ばれた男性は頭を下げる。
「お久しぶりです……」
彼は28年前白石のマネージャーをしていた人物だった。
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むつき(プロフ) - だんぼさん» おひさしぶりです！今回のお話は重くてなかなか文章が出てきませんでした。そんな優しい言葉を言われたら泣いちゃいます。ありがとうです。これからもがんばります。 (2014年4月12日 23時) (
レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
だんぼ(プロフ) - むつきさん、お久しぶりです。潤くんのお話…切なかった…白石さんの記憶を思うと… そしてそれを感じてしまう雅紀と支えるにの…5人の絆と優しさに 感動しました！ むつきさんのお話って本当に温かくて、後からじんわり効いてくる…そんな感じですね… (2014年4月12日 13時) (レス) id: 5df5e1bd71 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - みのりさん» はじめまして。読んで頂き嬉しいです。ほっこりが伝えて行けるようにこれからも精進致します。 (2014年4月9日 23時) (レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - ケイさん» すべてを受け止める優しさは強さでもありますよね。彼にはそんな力があると思います。コメントありがとうございます。 (2014年4月9日 23時) (レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
みのり - 初めてコメします。このお話し大好きです。5人のホッコリ感もとっても素敵です。ずっと続けて下さい。 (2014年4月9日 10時) (レス) id: 5959279da5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むつき
| 作成日時：2014年3月8日 19時
