278話 書き換えた記憶11 ページ28
カフェのドアが開き、本日最後の客が帰っていく。
「ありがとうございました」
門のcloseの札を下げ店へ戻ってきた雅紀。
時刻は17時。
いつもより早く閉店。
「そろそろ来るんじゃない？」
店内の掃除を始めた和也。
雅紀を二階に移動させようと背中を押す。
「俺ここにいる。二階はおーちゃんが片付けてくれているし」
チッと口を鳴らす和也の口をつまむ。
「この子は〜口を鳴らすもんじゃありません」
「うっせ〜」
そんなじゃれつきを横目に食器を洗いながら潤は難しい顔をしていた。
これから訪れる時間に気が重くなっていた。
「上の片付け終わったぞ」
二階の片づけを終え智が降りてきた。
「ここのお手伝いをよろしく」
「ん？ニノの口が赤いのはなんでだ？」
犯人はこの人ですと雅紀を指差す。
「翔君は？」
「もう帰ってくると思いますよ」
「それと彼女も……ね」
雅紀の視線は外を向いていた。
その先には白石。
午後の放送を終えて潤に会いに来たのだろう。
Closeの札もなんのその、彼女は店に向かって歩いてくる。
「あぁ……来たな」
「来ましたね、雅は俺の後ろにいて」
「……はぁい」
キッチンからの水の音が止まる。
「こっちの片付けも終わった」
潤がエプロンを外す。
ドアが開いた。
「こんにちは。今日は早めの終わりなのかしら？」
閉店したと言うのに当たり前のように店内に貼ってきた白石。
当たり前のように潤に向けて一直線。
カウンターに座った。
「マンションの書類は見たかしら？選んでくれた？」
キッチンから出て白石にすぐそばに立つ潤の右手に封筒が持たれていた。
「これお返しします」
マンションのパンフレット。
「俺はあなたと暮らしません」
「……どうして？」
「あなたの子供ではないからです」
「何を言っているの？あなたは私の子よ？」
潤は悲しい気持ちで一杯になった。
「白石さんは俺が自分の子供じゃないってわかっている筈です」
「何を言っているの？」
「だから……俺の名前も息子さんの名前も呼ばない。自分で気づいていなかった？」
潤が自分の子供ではない。
だから息子の名前で呼ぶことはなかった。
認めることが出来なくて、潤の名前も呼べなくなっていた。
「俺は潤と言う名前です。あなたではない」
少し離れた場所で潤と白石を見ていた雅紀は
「……あまり良くない……」
と口にした。
智も頷く。
「白石さんの気持ちが暴走しそうだ」
和也の肩に手を乗せていた雅紀。
手に力が入っていく。
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むつき(プロフ) - だんぼさん» おひさしぶりです！今回のお話は重くてなかなか文章が出てきませんでした。そんな優しい言葉を言われたら泣いちゃいます。ありがとうです。これからもがんばります。 (2014年4月12日 23時) (
レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
だんぼ(プロフ) - むつきさん、お久しぶりです。潤くんのお話…切なかった…白石さんの記憶を思うと… そしてそれを感じてしまう雅紀と支えるにの…5人の絆と優しさに 感動しました！ むつきさんのお話って本当に温かくて、後からじんわり効いてくる…そんな感じですね… (2014年4月12日 13時) (レス) id: 5df5e1bd71 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - みのりさん» はじめまして。読んで頂き嬉しいです。ほっこりが伝えて行けるようにこれからも精進致します。 (2014年4月9日 23時) (レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - ケイさん» すべてを受け止める優しさは強さでもありますよね。彼にはそんな力があると思います。コメントありがとうございます。 (2014年4月9日 23時) (レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
みのり - 初めてコメします。このお話し大好きです。5人のホッコリ感もとっても素敵です。ずっと続けて下さい。 (2014年4月9日 10時) (レス) id: 5959279da5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むつき
| 作成日時：2014年3月8日 19時
