274話 書き換えた記憶7 ページ24
28年前連れ去られたわが子を探している白石。
その子が潤ではないかと言う。
シスターはきっぱりと否定をした。
状況から見ても別人。
けれど白石は聞こうとしない。
「私、ずっと息子を探しているんです。ずっと、ずっと……」
負の感情。
それは喪失、絶望、不安からなるものか。
彼女の心の中に渦巻いている。
一番に感じるのは悲しみだ。
引きずり込まれる。
わかっているのに雅紀は白石の心に触れてしまう。
「……息子さんが連れて行かれたって言っていましたよね？どういう事ですか……」
駄目だ。
関わるなと潤が肩に手を置く。
「潤君が白石さんの子かそうじゃないかはっきりするかもじゃん」
確かにこのままでは疑問を持ち続けられたままになる。
はっきりさせるべきなのか。
「引き離されたのよ……あの頃駆け出しの女優で……未婚で子供を産んだの……」
相手は有名な俳優。しかし彼には妻も子もいた。
白石は密かに産んだ。
出産後、一人で育てていたが……
相手の俳優と事務所に子供を奪われた。
「あの頃は若くてどうしていいかわからなかった……あの子を探すことすら出来なかった」
誰に尋ねてもわが子の行方を知れず。
年月が過ぎ、女優の傍ら司会の仕事を初めて独立。
やっと子供を探す事が出来るようになり10年。
「昔のことで情報もなくて……」
平日の生放送番組を持つ彼女は、休日にこうして孤児院や教会、福祉施設を探し歩いているのだ。
気の毒に思う。
「心中お察し申し上げますが……私どもの教会も身元の判らない捨て子は今も昔もこの子だけです。潤もあなたのお子さんではないと断言できます」
「私には自分の子供の様に思えて仕方がありません」
「ねぇ白石さん……お子さんに会いたいのは取り戻すためですか？」
雅紀は静かに問う。
「……自分の子供に会いたいのは母親として当然の事でしょう？」
「他にどんな気持ちがあります？」
「……謝罪の気持ちです」
そばにいられなくてごめんなさい。
寂しい思いをさせてごめんささい。
守ってあげられなくてごめんなさい。
あなたの未来を奪ってしまってごめんなさい。
「何もしてあげられなくて……」
白石の目から涙が零れる。
「……ごめんな……さい……」
暫く泣いてすっきりしたのか白石はテレビで見せる顔になった。
今日はこのまま失礼します。
後日潤との親子関係をはっきりさせたいと言い残して帰って行った。
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むつき(プロフ) - だんぼさん» おひさしぶりです！今回のお話は重くてなかなか文章が出てきませんでした。そんな優しい言葉を言われたら泣いちゃいます。ありがとうです。これからもがんばります。 (2014年4月12日 23時) (
レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
だんぼ(プロフ) - むつきさん、お久しぶりです。潤くんのお話…切なかった…白石さんの記憶を思うと… そしてそれを感じてしまう雅紀と支えるにの…5人の絆と優しさに 感動しました！ むつきさんのお話って本当に温かくて、後からじんわり効いてくる…そんな感じですね… (2014年4月12日 13時) (レス) id: 5df5e1bd71 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - みのりさん» はじめまして。読んで頂き嬉しいです。ほっこりが伝えて行けるようにこれからも精進致します。 (2014年4月9日 23時) (レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - ケイさん» すべてを受け止める優しさは強さでもありますよね。彼にはそんな力があると思います。コメントありがとうございます。 (2014年4月9日 23時) (レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
みのり - 初めてコメします。このお話し大好きです。5人のホッコリ感もとっても素敵です。ずっと続けて下さい。 (2014年4月9日 10時) (レス) id: 5959279da5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むつき
| 作成日時：2014年3月8日 19時
