272話 書き換えた記憶5 ページ22
突然教会を訪ねてきた白石。
潤の姿に驚いたのは言うまでもない。
「カフェの方よね？どうしてここに」
「……ここの出身の者ですから……」
孤児院でもある教会。
「そう……なの……？」
「白石さん……何か御用ですか？」
「昔からここにお勤めされている方はいらっしゃるかしら？お伺いしたことがあるの」
「昔からここにいる人間ですか？」
昔からここに勤めているのは潤の母親代わりのシスターくらいだ。
何の用なのか？
今、雅紀と食堂で話をしている筈。
「今、席を外しています」
「昔の事でお聞きしたいことがあるのよ」
「俺じゃダメですか？今ここにいるシスターたちよりは昔の事は知っていると思いますよ」
白石は少し考えた。
「28年前の事なんだけど」
「28年前？」
「生後4か月の男の子がこちらに保護されていなかったでしょうか？」
「生後四か月？赤ん坊？」
そこまで昔になると潤も判らない。
シスターなら知っているだろう。
でもシスターを呼びに行きたくはなかった。
雅紀と一緒にいる。
白石からの負の影響を避けたい。
が、子供の一人が気をきかせて呼びに向かっていた。
お茶を雅紀と楽しんでいたシスターは来客を知る。
「雅紀さん少しお待ちくださいね」
シスターを客人の元へ向かおうとする。
子供になんという名前の人か尋ねる。
「んと……潤兄ちゃんが、白石って呼んでいた」
シスターは聞き覚えのない名前のようだったが、雅紀は覚えがあった。
潤が知っている白石は多分司会者の白石。
近づくなと和也から言われていた人。
嫌な感じが胸を通り過ぎる。
「……シスター俺も行きます。良かったら俺の腕を掴んでください」
目の悪いシスターを正面玄関へエスコートする。
潤が話していた相手は雅紀が思っていた通り白石だった。
必死に何やら話している姿。
潤は困ったように話を聞いている。
「ごめんなさい。俺もわからないです。そこまで昔だと俺も赤ん坊の頃だからわからないです」
白石の顔色が変わる。
「あなた……赤ちゃんの頃からここにいるの？」
「えぇ俺捨て子だったので」
目つきが変わった白石に雅紀は背中から頭にかけて寒気が走った。
『危険』
頭の中でサイレンが鳴る。
「じゅ、潤君！」
雅紀の声に顔をしかめたのは潤。
シスターを連れて近づいてくる。
「……相葉さんだったかしら……あなたもいらしたのね」
見つめられたその目にシスターの手を雅紀は握った。
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むつき(プロフ) - だんぼさん» おひさしぶりです！今回のお話は重くてなかなか文章が出てきませんでした。そんな優しい言葉を言われたら泣いちゃいます。ありがとうです。これからもがんばります。 (2014年4月12日 23時) (
レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
だんぼ(プロフ) - むつきさん、お久しぶりです。潤くんのお話…切なかった…白石さんの記憶を思うと… そしてそれを感じてしまう雅紀と支えるにの…5人の絆と優しさに 感動しました！ むつきさんのお話って本当に温かくて、後からじんわり効いてくる…そんな感じですね… (2014年4月12日 13時) (レス) id: 5df5e1bd71 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - みのりさん» はじめまして。読んで頂き嬉しいです。ほっこりが伝えて行けるようにこれからも精進致します。 (2014年4月9日 23時) (レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - ケイさん» すべてを受け止める優しさは強さでもありますよね。彼にはそんな力があると思います。コメントありがとうございます。 (2014年4月9日 23時) (レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
みのり - 初めてコメします。このお話し大好きです。5人のホッコリ感もとっても素敵です。ずっと続けて下さい。 (2014年4月9日 10時) (レス) id: 5959279da5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むつき
| 作成日時：2014年3月8日 19時
