20.優しい手 ページ20
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「拓也さん、絆創膏とか買ってきましたよ。」
「ん…ありがとうな。」
人ごみを抜け、私たちは星ヶ丘公園まで走ってきた。
突き飛ばされたときに擦りむいた拓也さんの手を手当てする。
「拓也さん…ほんとにごめんなさい…あんな人のせいで、怪我までさせて…」
「俺のことはええねん…それよりAちゃんは大丈夫?」
「拓也さん…私…」
拓也さんが自分のせいで傷ついたこと。
たくみに何も言い返せなかったこと。
……拓也さんに不快な思いさせたこと。
恥ずかしくて悔しくて、思わず涙がこぼれた。
拓也さんはそんな私の涙をそっと拭った。
「私…私そんなことしてないのに…なにも…してないのに…」
「Aちゃん…」
泣いている私の頭をなで、そっと抱きしめられた。
あたたかく、優しいその手が心地よくて、涙がなかなか止まらなかった。
「…大丈夫。俺はAちゃんのこと信じてるからな…」
「拓也さん…」
顔を上げると、拓也さんはさっきまでの表情とは打って変わって、とても優しく笑っていた。
「ふふっ、ぶっさいくな顔やなあ〜」
「…なっ!人が泣いてるときにそんなこと言います?!」
「あーあー化粧もひどいことになってんで〜?」
「もー!!わかったからほっぺむにむにしないでください!!」
拓也さんが私のほっぺをつねりながら爆笑する。
この子どものような無邪気さに、私は救われているんだな、と感じた。
本当に、素敵な人なんだ―――
「あーおもろいわあ……落ち着いた?」
「ん……ありがとうございます…」
「よかった。もう泣かんといてな…」
目が合った、ほんの一瞬のことだった。
拓也さんの唇が、私の頬に触れた。
「……へ、あ、え、ひゃああああああ??!!」
突然のことで驚き、思わず拓也さんを突き飛ばした。
「おわっ、えらい今日は突き飛ばされるなあ」
「ご、ごめんなさい……っじゃなくって!な、なに…」
「いや、なんか、ついね笑」
「ほんとそういうのよくない!!!!」
無邪気に笑うあなたが全然つかめなくて、
ただただ振り回されっぱなしなんだ。
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作者名:ゆき | 作成日時:2020年7月16日 1時