18.聞きたくない ページ18
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「Aじゃん、久しぶりだな。」
「そ、そうだね…久しぶり。」
「サークル引退してから連絡なかったし、さみしかったぞ?」
「はは……」
彼の家を飛び出したあの日の後、私は一方的に別れを告げて連絡先を消していた。
その後、彼が私に会いに来ることもなかったのに、さみしいだなんてよく言えるもんだ。
「てかなにしてんの?1人?」
「…違うよ」
「あーわかった。また男だろ?お前いっつも男連れて遊んでるもんなー」
「――っ……」
やめて、そんなこと言わないで。
思い出したくない過去が、私を襲う。
「俺の後に何人と関係もったの?」
「いないから…」
「ぜってえ嘘じゃん笑 てか、これから俺と遊ばね?どうせ連れも似たような感じなんだろ?」
「!!いいかげんに―――」
「―――俺の彼女に何してんの?」
いつの間にか拓也さんが帰ってきており、たくみの腕を掴んでいた。
彼の目は冷たく、怒りに満ちた声色だった。
「…へえ、あんたがこいつの新しい男ね……てか、どんだけ顔隠してんの笑」
たくみが拓也さんの腕を振り払う。
拓也さんはただ黙って睨んでいるだけだった。
「……行こう。」
拓也さんが私の手を掴み、その場から離れようとした。
その行く先をたくみが遮る。
「…どいてくんない?」
「彼氏さんさあ。そいつのこと何処まで知ってるか知らないけどさあ…そいつの本性知ってんの?」
「知らない。お前には関係ない。」
「そいつ…平々凡々な見た目のわりに…」
私はたくみが言いたいことをなんとなく察した。
絶対、誰にも知られたくないような。そんな私のこと――
「ちょっと、やめてよ!!!」
「―――寄ってくる男なら誰にでも股開くようなビッチだからな」
「――――!!」
最悪だ。
もう無理だ。何でこんなことになったのだろう。
拓也さんがいる前で、そんな言われようするなんて。
もう、拓也さんに顔向けできない。
なにも、言えない。
「てめぇ…ほんとにいい加減にしろよ?」
「彼氏サンもさぞいい思いさせてもらってるんじゃないの?こいつそういうのだけはうまいからな。」
「………」
拓也さんが今にも殴りかかりそうなくらいこぶしを握っている。
だが、彼はそれをぐっとこらえ、
「『君と僕が出会わなければ』…だっけ?」
と、冷たい笑みを浮かべながら言った。
聞き覚えのあるフレーズに、私ははっとした。
「たっくんの…曲?」
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作者名:ゆき | 作成日時:2020年7月16日 1時