15．期待 ページ15
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「あ、そういえば。」
私はクローゼットの奥からあるものを取り出した。それをロフトへと運び、拓也さんに渡す。
「これ…ギターやん！しかもそこそこええやつ！」
「一応軽音サークルの部員でしたからね笑よければこれもどうぞ！」
「え、こんな高いもんもええの？」
「まあ、私はあんまり使わないですしね。使ってもらった方が楽器も喜びますよ。」
「ほんま、なにからなにまでありがとうな…」
拓也さんはギターを大事に手に取り、チューニングを合わせる。
私がギターケースに入っていたピックを渡すと、ギターを鳴らした。
久しぶりに聞く私のギターの音がなんだか懐かしく感じた。
拓也さんはそのまま、滑らかなストロークをしながら歌い出した。
「〜♪」
拓也さんの生歌に興奮しつつも、その歌声に聴き惚れてしまう。
拓也さんの歌う曲には、聴き覚えがあった。
「それ、『接触』…」
「そう。俺の中では、一番最初に聴いたファンになるね。」
「めちゃくちゃうれしいですけど、照れますね笑」
「私どの曲も好きですけど、この曲すごく好きですよ。なんか拓也さんみたい。」
「俺みたい？なんか照れるけど、あながち間違いやないからなあ。
俺の『負の感情』を全部詰め込んだものやから。」
「実質もう一人の拓也さんですね笑」
「なんか、ほんまAちゃんって俺らのことよう分かってんなあ。」
「えへへ、大ファンですもん！」
そっか、と優しく笑うと、また弦を弾いた。
今まで聞いたことないメロディーを奏でる。
「あ、聴いたことないかもです。」
「結局ボツにしてもうたからね。Aちゃんだけに特別ね。」
「そんな嬉しいこと言われると、期待しちゃいますよ〜笑」
「…してていいよ？」
「え？」
「期待、しなよ」
拓也さんが私へと手を伸ばす。
驚いて固まっている私の頬に、手が触れる。
「え、あ……」
指先が触れたところが熱くなり、そこから全身へと熱が伝わる。
私を見つめる目が輝いていた。
「…………ふはっ！おもろい顔すんなや！笑」
「ふぇ？！」
拓也さんは固まっていた私のほっぺをぐいっとつねった。
「Aちゃんはかわいいでちゅね〜〜」
「うわっ、そういうのほんとよくない！！性格わっる！！」
「Aちゃんはかわいくてからかいがいがあるんやもん笑」
さっきまでのときめきは一瞬で消えた。
ほっぺをつねられながら、私はいつか復讐してやると誓った。
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作者名：ゆき | 作成日時：2020年7月16日 1時
