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『(…あれ、これ私が楽しんじゃってない?)』
張り切って外に出たはいいものの。
どこに行きたいかと問えば私の行きたい所だと答えた巳波をとりあえずスカイツリーまで連れて行き、クリスマスマーケットのキラキラ浮かれた様子を見て私が目を輝かせるまで、移動時間は小一時間。
その間に気づけただろうに、私の馬鹿。
『巳波、なんか欲しいものないの?別に無理に決めなくてもいいんだけど…』
巳「…そうですね、加湿器とか…?」
『売ってるかなぁ、探してみよう。』
クリスマスマーケットまで来て加湿器を欲しがる人なんているのかと疑問に思いつつも歩き出す。巳波が欲しいと言うのならとりあえず探すべし。
すると不意に右手を掴まれて、思わず歩みを止めてしまった。
『え?』
巳「はぐれますから。」
『あぁ、そ……うん。』
彼氏かよ。
どデカい声で叫びそうになったそのツッコミは、なんとか心に留めた。
・
『やっぱり家電はあんまり売ってないか〜…』
巳「A、あなたは欲しいもの無いんですか?」
『うーん最近パソコン買ったしな…しばらく物欲は出なさそう。』
巳「絵描きとしてではなくて、普通に女子大生としてですよ。コスメなりアクセサリーなり、あるでしょう?」
『えぇ…?』
なんだ、やけに今日は食い下がってくるな?
散財したい気分なのかしら…だったら自分が欲しいもの買えばいいのに。
と声に出せればいいけど、生憎1度こうなった巳波が大人しく引き下がるわけが無いということは、よくわかっている。
『あ、お腹空いた。なんか食べたい。』
巳「……わかりました。」
全体的に納得がいかなさそうだけど、私の意図も伝わったのだろう。小さくため息をついたら了承の合図。
巳「そういえば、寒くないですか?」
『うん!巳波の服はあったかい。』
巳「冷えたらすぐ言ってくださいね。」
『はーい。』
巳「あ、これ持っててください。もうすぐ日も暮れますから。」
『あ、うん。ありがと…』
……彼氏ってか、父親だな。
生温いカイロを持ちながら、そんなことを思った。
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さちこ - 妹の特権シリーズ、全部大好きで、本当に素敵なお話ばかりで、書いてくださっていることに感謝です。甘やかしてくれる巳波が最高です。これは本当に勝手な希望なのですが、いつか和泉兄弟の妹(一織と双子とか)のお話を書いて下さらないかなあと思ったりしています… (1月21日 22時) (レス) @page28 id: e8a5c1f9d7 (このIDを非表示/違反報告)
妄想人間 - ありがとうございます。いつも楽しく読ませてもらってます!リクエストなのですが妹ちゃんがゼロの絵を描いてる時に九条と出会って舞台演出の絵を妹ちゃんに描いてもらう話を見てみたいです!よろしくお願い致します。 (10月2日 12時) (レス) id: 2d8b52f242 (このIDを非表示/違反報告)
なつめみく - 今気づいたけどこの人の他の小説自分めちゃくちゃ読んだことあってタグの天野いろはって名前をよく見かけててこの作品の凄いって思って作者みたらいろはさんでした (9月30日 22時) (レス) id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
全自動駄作製作機(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます、棗兄妹もŹOOĻも皆幸せに暮らしてね...珍しくお熱出しちゃう話とか読みたいです。 (8月26日 17時) (レス) @page2 id: 71c95f50b7 (このIDを非表示/違反報告)
天音 - いつも楽しく読ませてもらってます!八乙女楽との絡みがみたいです。 (8月24日 23時) (レス) id: d3cdc3cfb4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天野いろは | 作成日時:2023年8月6日 2時