すぐに溶けてしまわぬよう ページ17
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巳「お出かけしませんか。」
『……へ?』
大学が冬季休暇に入り、特に急ぎの仕事も無いからと炬燵でぬくぬくだらだらしていた私に、突如としてその言葉は降ってきた。
『どこに?』
巳「…行くのはいいんですね。」
『全然それは…寧ろ嬉しいけど。うん。』
何やら複雑な顔をする巳波に首を傾げたが、すぐ何事も無かったかのように真顔に戻った。
巳「場所は行きながら考えます。準備してください。」
『服貸して。』
巳「…冬服は持っているでしょう?」
『巳波と出かけるなら巳波の服着たい。』
ため息を着きながらも手招きしてくれたので、喜んで巳波の部屋に入った。
『白にするわ。』
巳「ちょっ…ここで脱がないで。」
『あ、ごめん。』
こういう時、自分の時計は10歳の頃から止まってるんじゃないかと思えてくる。だって昔は一緒に服交換して着せ替えごっことかしてたんだもん。
『大人になっちゃったんだねぇ、』
巳「……」
『…?』
あれ。
いつもの「急になんですか」のツッコミ待ちだったが、何故か巳波は少し顔を顰めて固まってしまった。
『…巳波?』
巳「!はい。」
『大丈夫?何か悩んでるの?』
思えば違和感はそこら中にあった。巳波から「お出かけ」の誘いなんて今までされたこと無かったし、外で一緒にいるなんて目立つから仕事から帰る時くらいしかなかったのに。
バツが悪そうに黙り込んだ巳波を見て、疑惑は確信に変わる。
『…行こっか。場所決めてないなら探しながら歩こ!』
きっとこれは、巳波なりのSOS。
普段面倒見てもらってるし、ここいらでデカめの恩返しをするチャンスだ。
そう意気込んで、私は巳波の手を引いて外に出た。
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さちこ - 妹の特権シリーズ、全部大好きで、本当に素敵なお話ばかりで、書いてくださっていることに感謝です。甘やかしてくれる巳波が最高です。これは本当に勝手な希望なのですが、いつか和泉兄弟の妹(一織と双子とか)のお話を書いて下さらないかなあと思ったりしています… (1月21日 22時) (レス) @page28 id: e8a5c1f9d7 (このIDを非表示/違反報告)
妄想人間 - ありがとうございます。いつも楽しく読ませてもらってます!リクエストなのですが妹ちゃんがゼロの絵を描いてる時に九条と出会って舞台演出の絵を妹ちゃんに描いてもらう話を見てみたいです!よろしくお願い致します。 (10月2日 12時) (レス) id: 2d8b52f242 (このIDを非表示/違反報告)
なつめみく - 今気づいたけどこの人の他の小説自分めちゃくちゃ読んだことあってタグの天野いろはって名前をよく見かけててこの作品の凄いって思って作者みたらいろはさんでした (9月30日 22時) (レス) id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
全自動駄作製作機(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます、棗兄妹もŹOOĻも皆幸せに暮らしてね...珍しくお熱出しちゃう話とか読みたいです。 (8月26日 17時) (レス) @page2 id: 71c95f50b7 (このIDを非表示/違反報告)
天音 - いつも楽しく読ませてもらってます!八乙女楽との絡みがみたいです。 (8月24日 23時) (レス) id: d3cdc3cfb4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天野いろは | 作成日時:2023年8月6日 2時