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謎のメッセージの正体は案外単純だった。
巳「…もう遅いです。帰ってください。」
「ねぇ巳波、お願い考え直して。お母さんの言うことを聞いて?」
マンションのエントランスで繰り広げられる親子喧嘩。
久しぶりに聞く母の声は、9年前とそう変わらなかった。
「あの子と一緒にいたらあなたはダメになる。
そんなの嫌でしょう?せっかく今たくさん仕事が来ているのに…」
ついでに、私が相変わらず嫌われているのも、変わっていない。
巳「Aも私も、お互い好き勝手やっているので大丈夫ですよ。心配いりません。」
「巳波は優しすぎるのよ…あの子はただでさえ生まれた時から反抗期で、家族の言うことなんて一度も聞いたことがないじゃない!
あの子がフランスに行った後、私本当にホッとしたの…救われたと思った。もうこれで悩まなくていいんだって…」
巳「…自分の娘を、そんな風に言うものではないでしょう。」
「……あんな子、娘なんかじゃ」
巳「それ以上はいくらあなたでも許しません。」
少し強い巳波の物言いに、私も息を飲んだ。
巳「Aが娘じゃないのなら、私もあなたの息子ではありません。Aがあなたにとって厄介者だとしても、私にとってはたった一人の妹なんです。
わかったら二度とそんな風に言わないで。あと先程のラビチャも…次やったら本当に怒ります。
お互いのために、Aが帰ってくる前に早く行ってください。」
「巳波…どうしちゃったの…?お母さんのこと嫌いになったの?ねぇお願い、あなたにまで嫌われたら私はどう生きていけばいいの…!」
巳「………」
『っ、』
苦しそうな顔をした巳波に、罪悪感が湧き上がった。
巳波はずっと母の言いなりになっていたんじゃない。母のことが好きだったから、喜ばせたかっただけなんだ。
巳波の言葉を借りるのならば、私にとって母は毒親でしかないけど、巳波にとっては大切な家族の一人で…
でも、私と母はもう無理だ。巳波の望む家族の形にはもう戻れない。
こんな苦しそうな顔を、させたかったわけじゃないんだけど。
『…巳波、ただいま!』
巳「!A…」
「……っ」
せめて、手っ取り早くこの空気から巳波を解放しなくては。
そう意気込んで、頬に走った強い痛みを必死に耐えた。
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なつめみく - わあああ凄いです!ミナミチャァン大好きなんで助かります、!!にしても文かくの上手すぎてめちゃめちゃ読みいってた、!! (9月30日 22時) (レス) @page46 id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 完結おめでとうございます できればですがユキくんの妹の特権を書いて欲しいです お体に気をつけてくださいね (8月3日 1時) (レス) @page46 id: 8a945fb4c9 (このIDを非表示/違反報告)
koguma62(プロフ) - 完結おめでとうございます!巳波の続編読みたいです!最近熱中症で倒れる方多いので天野さんも体調に気を付けてくださいね(* ᴗ͈ˬᴗ͈)” (8月3日 0時) (レス) @page47 id: eb36b314f5 (このIDを非表示/違反報告)
ななは(プロフ) - 完結おめでとうございます!!毎日にやけながら読んでました。作者の部屋を見たのですが、陸くんの小説が見たすぎます...天野さんの物語の雰囲気というか語彙とかお話の進め方がすごく好みなので..とっっても書いて欲しいです...これからも応援してます!! (8月2日 19時) (レス) @page46 id: 8319d77ff3 (このIDを非表示/違反報告)
富田菫(プロフ) - 今回の話も最高でした!続編ぜひ見たいです(*^^*) (8月2日 8時) (レス) id: cd0b8d30c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天野いろは | 作成日時:2023年6月21日 13時