妹の特権【棗巳波】

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この前の巳波、たどたどしいとか思ってごめんね。

この歳になって面と向かって話すなんて、そりゃあ不器用にもなるよね。





『…お母さんがさぁ、もう絵は描くなって。
あんたの絵も、あんたの顔も見たくないって。』





こんなしんみりした話、夜にしたら余計ヘコむかもだけど。





『だから、巳波もそう言うだろなって思ったの。見せるの恥ずかしかった。
巳波に否定されたら…流石に私でも凹んじゃうから、』





巳波は動かないし、何も言わない。





『ごめんなさい。褒めてくれたのに、酷いこと言って。
ほんとは巳波の絵、誰よりもいっぱい描いてるんだよ。』





袖なのかシーツなのかわからない手元の布をぎゅっと握って、返事を待つ。

沈黙が苦しくて、胸が痛んだ。





巳「…知ってる。」

『……え、』

巳「この前、全部見たから。」





ゆっくりと寝返りを打った巳波と、至近距離で目が合った。





巳「……1回しか言わないからよく聞いてください。
私はAがどんな趣味を持っていようが、あなたが楽しいなら何も怒らないしやめろなんて言いません。…母さんと違って、追い出したりもしない。
だから、絵を描いている自分をそんな風に卑下しないで。嘘でもお世辞でもなく、私はAの描いた絵が好きです。」









＿＿楽しそうに絵を描いているあなたが好きなんです。









『わ…ぁ、え……、？』


巳「…まだわかりませんか。あなた私のこと大好きなのに、私自身の気持ちは何も分かってないんですね。」

『ちょっ…え、ちょっと待って、もう1回』

巳「1回しか言わないと言ったでしょう。おやすみなさい。」

『無慈悲…！』





勘違いじゃなければ、今巳波は私のことをべらぼうに褒めてくれて。

否定なんかしないから、自信を持て……って、言ってくれたってこと？今世紀最大レベルに激励してくれたってこと…？


なんなのこの兄、大好きなんですけど(大声)





『てか待って、いつ巳波の絵見たの。』

巳「初めてあなたの絵を拝見したその日に。」

『始まった時から終わってた…！』









＿＿＿＿＿何はともあれ、仲直りできました。


お礼のラビチャをこの時間に送っても速攻でスタンプが帰ってきたのを見て、また彼はアニメを見ながらオールをしてるんだろうなぁと1人頬を緩ませた。







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