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二階堂大和
六「ノースメイアで春樹と再会した時、『人形のように綺麗な女の子とフランスで出会った』と彼は言っていました。」
巳「……、」
六「『その子の絵が、どんな有名な画家が描いたものよりも好きだった』とも。」
その言葉を聞いて、泣きそうな、でも嬉しそうな顔をする棗ちゃんに、なんだか胸が熱くなる。
そうだよな、世界一慕っていた人に身内を褒められて、嬉しくないわけないよな。
六「棗氏がここに来るまで、春樹のことをたくさん聞きました。
BARで口説かれていたのを助けてくれたこと、それが2人の出会いだそうです。」
巳「あぁ、あの時言ってた…」
心当たりがあったのだろう、棗ちゃんはそう呟いた。
六「彼女も春樹も、お互い自己紹介はしなかったそうです。瞬く間にBest friendsになり、名前を伺うタイミングを失ったんだとか。」
二「安易に想像できるな…」
巳「桜さんに至ってはAで遊びましたね。」
六「ええ…ですが、それだけではないようです。」
巳「?」
少し悲しそうな顔をするナギに、こちらの心もざわつく。
六「……きっともう二度と春樹と会えないこと、これが最初で最後の、かけがえのない出会いだったこと。
彼女はそれを、知っていました。」
巳「…え、」
二「なんで…名前も、病気のことも知らなかったんだろ?」
六「大和とチバシズオが血縁だったこと、陸と九条氏が双子だったことを一瞬で見抜いた彼女の観察力は尋常ではありません。」
二「…………」
六「会う度に弱っていく春樹に、それを春樹が隠そうとした理由があったことに、彼女が気づかないわけがないのです。」
そう言えば、そうだった。
ただ楽しそうに絵を描いているようで、その裏にはきっと、彼女なりに思うことがあったんだろう。
じゃないと、こんな絵は描けない。
二「…本人は自覚してんのかねぇ。」
六「…No. 恐らくですが、」
巳「えぇ…だから一層、タチが悪いですね。」
二「………」
こんな、見るだけで泣きたくなるような絵は。
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なつめみく - わあああ凄いです!ミナミチャァン大好きなんで助かります、!!にしても文かくの上手すぎてめちゃめちゃ読みいってた、!! (9月30日 22時) (レス) @page46 id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 完結おめでとうございます できればですがユキくんの妹の特権を書いて欲しいです お体に気をつけてくださいね (8月3日 1時) (レス) @page46 id: 8a945fb4c9 (このIDを非表示/違反報告)
koguma62(プロフ) - 完結おめでとうございます!巳波の続編読みたいです!最近熱中症で倒れる方多いので天野さんも体調に気を付けてくださいね(* ᴗ͈ˬᴗ͈)” (8月3日 0時) (レス) @page47 id: eb36b314f5 (このIDを非表示/違反報告)
ななは(プロフ) - 完結おめでとうございます!!毎日にやけながら読んでました。作者の部屋を見たのですが、陸くんの小説が見たすぎます...天野さんの物語の雰囲気というか語彙とかお話の進め方がすごく好みなので..とっっても書いて欲しいです...これからも応援してます!! (8月2日 19時) (レス) @page46 id: 8319d77ff3 (このIDを非表示/違反報告)
富田菫(プロフ) - 今回の話も最高でした!続編ぜひ見たいです(*^^*) (8月2日 8時) (レス) id: cd0b8d30c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天野いろは | 作成日時:2023年6月21日 13時