・ ページ37
そこからは怒涛の展開で話が進んでいった。
前々から姉鷺さんに手伝ってもらいつつ纏めていた私物を全部実家に送って、楽の部屋とお別れをして。
楽も龍の家で3人暮らしをするからと、自分の部屋とお別れしていた。
十「Aちゃん。」
『…？』
十「楽と同じ部屋になっちゃうけど…実はAちゃん用にも、布団1つ多く頼んでたんだ。」
『え、』
十「…あんまり気軽には来れないだろうけど、いつでもおいで。
楽も、もちろんオレたちも、待ってるからね。」
『……』
胸がじわっと暖かくなる。こんな短期間で、いろいろあったのに私のことまで気にかけてくれてたんだ。
『…ありがとう。』
十「…うん。」
笑っているけどどこか悲しそうな表情の龍。
きっと私も同じような顔をしているんだろう。
伺うように手を伸ばされたので、目を閉じると頭に乗っかった。
前々から思ってたけど、龍の撫で方って安心する。
九「キミ達って本当、親子みたい。」
十「あ、天！もう荷物は詰められた？」
九「一通りね。」
車を出す準備をしてくると、龍はその場から去っていった。
ぼんやり見送ってから、天さんに向き直る。
九「…ねえ、今でもボクが怖い？」
『……』
首を振って否定したら、気遣わなくていいんだよと軽く笑われた。
『…大丈夫。』
九「……」
『だって、天さんは…壊れなかったから。』
あの人は壊れてしまったけれど。
天さんは、TRIGGERは違った。ちゃんと強かった。
貶められても、真っ直ぐ前を向ける人達だった。
九「…天でいいよ、A。」
『！』
九「もうキミは『メンバーの妹』じゃない。ボクらの仲間だ。
もう一度這い上がって、今度こそTRIGGERの専属作曲家としてオファーするから、そのつもりで。」
握手の形で差し出された手を掴んで、そのまま壁に投げつけられたことがある。
どうしても思い出してしまうことはあるけれど、それ以上に。
『…うん、いつでも。』
天への信頼が、より大きくなったのも事実だ。
少し震えていた手は、びっくりするほど暖かく包まれてすぐに落ち着いた。
安心したような顔で笑う天が、私の後ろに目配せする。
九「……ほら、楽。」
八「なんで順番待ちみたいになってんだよ。」
九「お兄ちゃんでしょ。最後飾って。」
「あら、それならお先にいいかしら？」
『えっ…』
横から入ってきた声は、まさかの姉鷺さんのものだった。
続く
お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1062人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みっきー(プロフ) - わーん更新してくださってありがとうございます！！またたのしみがふえました♡ (1月19日 13時) (
レス) @page34 id: 39298dc62b (このIDを非表示/違反報告)
花松ロン(プロフ) - 初めまして！！初めて読ませていただきました！すごく面白いし、読んでる途中で私まで泣いてしまったりしました笑続きが読みたいです。更新待ってます！ (6月21日 10時) (レス) @page33 id: 3241c90ca3 (このIDを非表示/違反報告)
みっきー(プロフ) - 更新してくださってありがとうございます！！続き楽しみに待っていたのですごくうれしいです´`* (2022年3月5日 1時) (レス) id: cb8c8181fe (このIDを非表示/違反報告)
天馬咲希 - 続き嬉しいです！！これからも更新頑張ってください！ (2021年10月3日 0時) (レス) id: dcd6ff7333 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：天野いろは
| 作成日時：2020年12月23日 21時
