蹴球女神 3

29 ページ29

何が起きたか一瞬理解できなかった
周りは自分より背の高い男ばかりでボールも見えず、気付いたら肩に何かが当たって笛が鳴る音と歓声が聞こえて、足元にボールが転がっていた

それはゴールラインを越えていた。



そこからはもう酷かった。
ケビンや真司に大丈夫だと言われて、自分でも取り返せば問題ないと思っていた

だけど初めてのオウンゴールのせいか精神的にきていて、当たり負けはするわシュートは枠にすら入らないわで途中交代となり、試合も負けてしまった。


オウンゴールをして途中交代までされて負けて、もう精神的にボロボロで篤人と居てもグルグルと“またオウンゴールするんじゃないか”“また全部上手くいかなくなるんじゃないか”と悪いことばかりが巡って、ついに食欲が落ちた



晴ちゃんのお店のメニューなら食べれるかと思って来たけど、大好きなカルボナーラなのに二口食べてもう進まなかった


サラダだけでもと手を伸ばしても半分も減らない



「食べれないのか？」

「…ごめん」

「折角鍛えた体が衰えるぞ」

「……うん。」

「取り返せなくなるぞ」

「……う…ん」

「悔しくないのか？」

「悔しいよ。悔しいに決まってる！でも怖いんだよ…」

「そーゆーときこそ恋人に頼るべきなんじゃねぇの？調度ディフェンダーでオウンゴールとか経験してるだろ？ちゃんと話してこい」

「…………」



篤人に言って良いんだろうか…
篤人も昔を思い出して調子を落としたりしないだろうか…

私のせいで篤人まで…


それだけは絶対に嫌だ！



晴ちゃんのお店を後にして私は練習場へと向かい、車にいれてあるジャージを持ってトレーニングルームへと足を運んだ


弱いからダメなんだ。

もっと力を付けなきゃいけない。
体幹ももっと鍛えてセットプレーの練習や研究もしなきゃ


今までの練習じゃ全然足りてない。

もっと…もっと…もっとやらなきゃ！


空腹を感じないのは好都合で、運動で減るアミノ酸やらはサプリメントで補給してプロテインで水分補給して

眠れなくなるのも体が疲れていれば寝れるからと少しくらい無茶をする


帰るのが遅くて篤人に心配されたりもしたけど、大丈夫だと言えば心配そうにしながらも引いてくれていた


そんな自主トレを１週間ちょい

相変わらず食欲はなくて、眠れなくて、最近は練習中に視界が揺れて気持ち悪くなることもあって、でも何も食べていない胃からは何も出ないのに吐き気は収まらなかった

30 内田side→←28

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す