まあまあな彼女２【赤】

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「渋谷さ…ん、私…もう」




震えるAちゃんに、
どこまでヤられたん、なんて聞けるわけなかった。

もしかしたら、ここに痕つけられたとこで逃げて来たんかもしれんし
もしかしたら、それ以上の…


あかん、考えたない。




「もう…明日も、早いので」



そんなん言いながら、俺から離れようとするAちゃん。


芯が通っとって、ふにゃふにゃしてそうなくせに自分の信念持っとるとことか、
最初にそんなとこに惹かれたけど


こんな顔する時のAちゃん、
めっちゃ嫌いやわ。
無理してこんなんすんの、
めっちゃ嫌いや。





「ありがとうございまし」

「何やねんそれ…」

「しぶた…にさ」

「何がありがとうございましたやねん、何されとんのか分かっとんのか？！どこまでで済んだんかは知らんけどそういう問題ちゃうやろっ？！」




Aちゃんは、じっと俺を見てる。
口元が震えとんのが分かった。

なんで、泣かへんねん…
ちゃんと、辛いって泣いてくれや…




「…警察行こ」

「え…」

「んなもん犯罪やんけ。警察行こ」

「…やめてくださいっ」




引っ張った手を、思っきし振り解かれた。
振り返ったら、Aちゃんは俺の顔をじっと睨んどった。




「いろいろ…あるんです」

「何やねん色々て。やってええことと悪いことあるやろ？！」

「渋谷さんには…分からないことです…」






パチン、って乾いた音が響いて、
右手がひりひりすんのに気づいた時にはもう遅かった。





左頬を押さえて俺の横をすり抜けて走ってったAちゃんの足音を、背中で感じながら立ち尽くした。





Aちゃんの目ぇから、
今日初めて涙が流れとった。

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