57話 失敗 ページ8
リビングの窓、外を見る雅紀の姿。
「カズの手伝いはいいの？」
「智ちゃん、今は二人にさせてる。一週間も経つのに和ちゃんの人見知りもね、いい加減にさせないと」
雪景色をじっと見つめている。
「写真を撮りに行きたい？」
「……うん」
この季節、雅紀はあまり外に行かせてもらえない。
夢中になると周りが見えなくなる性格は、冬の季節、幾度か凍死をしかけた過去がある。
冬は一人で外に撮影に行かせてもらえない。自業自得でもあるのだが。
だから冬の間は和也の手伝いをすることが多かった。
無理矢理に和也がやらせている、これも一つの愛情表現。
「雪の草原を撮りたいなぁ」
「真っ白だな」
「真っ白だけど」
二人声が合う。
「白い雪原を走る風を撮りたい」
目を輝かせて外を見る。
「……オイラも見たいな。近々一緒に行こうか？」
「ホントに？やった！」
リビング向こうの和也の部屋から雅紀を呼ぶ声がする。
「はいは〜ぃ」
部屋に入ると落ち込んだ直人の前に仁王立ちする和也がいた。
「どうしたの？」
「どうしたもこうしたもないです。これ」
一目で失敗とわかる原稿。
「なんでこんな場所にベタを塗ったの？」
「でしょ？この人が勝手にやってしまったのですよ。わからない所はちゃんと聞いてくれなきゃ困るんですけどね」
「まぁまぁ、これならホワイトで直せるじゃん、和ちゃんはお仕事続けて。直人君はこれを俺と直そうか」
無言で直人は雅紀の指示に従う。失敗した原稿はすぐに修正される。
「よしっと。直人君、コーヒー入れてきて。少し休憩にしようよ」
「……はい」
肩を落とし部屋を出た直人を智は優しく向かい入れる。
「コーヒーを入れさせてください」
「いい豆があるよ〜」
コーヒーのドリップを前に深いため息。
「……失敗しちゃったか」
「僕だって出来るんだって見せたかった」
雅紀への対抗心。
失敗に終わったが。
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むつき(プロフ) - トコトコさん» 更新が中々出来ていないのに嬉しいコメントに涙が出そうです。ありがとうございます。 (2020年1月11日 22時) (
レス) id: b2ef71cdde (このIDを非表示/違反報告)
トコトコ - HOME大好きです何度も読み返して同じ所で感動して涙が出てきます。もうすぐ!終わってしまうのが淋しいです (2020年1月11日 15時) (レス) id: 1dd726fb60 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - 雅さん» 読んで頂いて嬉しんです。ありがとうございます。 (2014年11月29日 19時) (レス) id: 4345b608cc (このIDを非表示/違反報告)
雅 - お話おもしろかったです (2014年11月29日 19時) (レス) id: b8b9771043 (このIDを非表示/違反報告)
むつき(プロフ) - 和雅さん» コメントありがとうございます！名前が変わっていたのは意図ではありません。むつきの頭のネジが緩んでいるせいなのです。慌てて直しました。ありがとう。全く気が付かず、一人照れ笑いしてました。もし何か変なところがあったら教えてください！ (2013年3月19日 12時) (レス) id: badd9dfabe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むつき
| 作成日時：2013年1月25日 22時
