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産声 ページ1

間違いなく。獣であった。

理性的な獣…人間と呼ばれる。獣であった。
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初夏 某日。

蒸し暑くなり始め、風がふけばまだ肌寒い。
風物詩の蝉達の声も産声を上げだした。
白く霞んだ快晴の青空に、Aは目を細めた。

まだ半刻も指していない午前中。
さらにこんなド田舎。に、何が悲しくて違法オークションが行われなければならないのか
理解し難い人の欲望(エゴ)に、今度は目を閉じた。

「行くで。A」
父から声がかけられる。

ド田舎の小さな診療所。という名のお悩み相談所。兼、この田舎周辺の言わば管理職であるこの父は、どこからか掴んできてしまった違法オークションの情報が本物であるか、危害はないかそんなものを確かめるためにこの場へと足を運ばざる得なかった。
子。Aも諸共に。

「はーい」
そんなことはどうでもいい。
付いて来いと父が言ったから来ているのだ。
そんなAは、ただ指示に同意(返事)するだけだった。

それを確認した父は吸っていた煙草の火を消し、
吸殻を携帯ケースへ入れて歩きだして、下に落ちていった。
Aも父に続いて落ちていく。

「うっ」
身体を受け止められた衝撃に思わず声を漏らした。
Aは自分の足で地面に降り立つつもりであったが、それを見越してAの父はその小さな身体を受け止めた。

Aの父は少々無茶な我が子に困ったように笑う。
父親としての愛故の表情だ。
そんなものを気にもとめず、無表情なままのA。

まだまだ自力で全てをするのは適わないらしい。と己の身体の成長を噛み締めていた。

「ありがとうございます」
それはそれとして。

他力を使って貰ったらお礼の言葉を言う。
それが社会の理念(ルール)だと理解しているAは、父に向かってそう言った。

ここはそんな高低差のある人の寄り付かないド田舎の視界の悪い岩場。
まさしく、違法オークション等が開催されそうな辺鄙な場所である。

先の少し拓けた場所に設置されている野営地(テント)
もちろん。こんなド田舎出身のAやその父でさえこんな場所に設置されていると聞いたのも、見つけたのも初めてである。

どう考えても外から置かれたソレ。


「はぁ…休労かぁ」
父は諦めたようにため息をついていた。

鼓動→



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作者名:いかずち∀ | 作成日時:2021年8月8日 23時

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