〇 ページ2
なるべく早く、頭から熱いシャワーを浴びて匂いを落としていく。
彼女が嫌がる匂いを全部…
「姫、お待たせ」
彼女の家に置いて行った部屋着に身を包み再びベッドの脇に座り込む。
枕から顔を上げた彼女の瞳は濡れていた。
涙の痕を拭うように目元に指を這わせると彼女の両手が俺の手をぎゅっと包み込むように抱き締める。
『…湊さんの匂い、だぁ』
「うん、Aちゃんの嫌なのもうないよ」
『やだっていってごめんなさい…わたし…』
「んーん、俺の匂いせんかったん嫌やもんね、俺のことめっちゃ好きなん伝わってくるよ、嬉しい」
もう片方の手で頭を撫でながら笑みを浮かべると少し腰を上げて目元に唇を落とす。
少し表情が和らいだ彼女がグイっと抱き締める腕を引き寄せてくる。
「ん…なぁに？」
『…こっち、きて、ぎゅってして』
「うん、もちろん」
布団を捲り彼女の隣に入り込むとすぐさま胸元に顔を埋めてくっついてくる姫の頭をぽんぽんと撫でて強く抱き締める。
隙間を埋めるように、絶対離さないとでも言うように背中に回した腕に力が入る。
『湊さんの匂い…、湊さんだぁ…』
「うん、うん…ここにいるよ」
『うん…、あのね、他の人の匂いは嫌なの…他の、女の人、やだ…』
言いながらまた涙を流す彼女の頬に手を添えて顔を上げさせると流れる涙に唇を這わせて拭っていく。
普段の彼女からは考えられないだろう、ぐすぐすと泣きじゃくる、こんな不安に押しつぶされそうな彼女の姿。
こんな姿を見れるのも俺だけ…こんな弱く脆い彼女の姿…
『やだ…っ、わがまま、で、ごめんなさ…、どこにもいっちゃ、やだぁ…』
「わがままちゃうよ、もっと俺のこと求めて…どこにも行かんよ、Aちゃんとずっと、ずっと一緒におるよ」
『うん…、う、んっ…』
ちゅっちゅ、と何度も唇を重ねながら一定のリズムで背中をぽんぽんと叩く、泣きつかれた彼女の寝息が聞こえると部屋の電気を消した。
「おやすみAちゃん…」
もっと、もっと…俺なしじゃ生きていけなければいいと思ってしまう。
こんなに脆い彼女を見るたびに思う。
姫は、わがままだって言うけれど、俺からしたら普段からもっとわがままになってくれてもいいのにって、思ってる。
…俺がこんな風に思ってるなんて彼女は知らないだろう。
どこにもいかないで？行くわけないやん
絶対離れない、離さない、離してあげない
彼女がなんて言おうと…
「ずーっと、一緒におるよ…、ずっと」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 921人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
aKa(プロフ) - ゆりゆりさん» リクエストありがとうございました。あぁぁ幸せになっていただけてよかったです。続編いきます！そちらでもまったりと更新していきますので、よろしくお願いします。 (2022年1月15日 0時) (
レス) id: 7ba2c9d64a (このIDを非表示/違反報告)
ゆりゆり(プロフ) - リクエスト聞いて下さりありがとうございます！！！毎度とても良い仕上がりで幸せに浸ってます！！続編に行くんですかね？これからも楽しみにしています！！ (2022年1月14日 19時) (レス) @page50 id: bfb8d6b19f (このIDを非表示/違反報告)
aKa(プロフ) - 永露PCさん» リクエストありがとうございました！中々シリアスな話は書いていなかったので心配でしたが、ご希望に添えていたのならば幸いです。 (2022年1月11日 21時) (レス) id: 7ba2c9d64a (このIDを非表示/違反報告)
aKa(プロフ) - すさん» コメントありがとうございます！てぇてぇありがとうございます、これからもてぇてぇさせていきますので、よろしくお願いします。 (2022年1月11日 21時) (レス) id: 7ba2c9d64a (このIDを非表示/違反報告)
永露PC - リクエストに応えてくださりありがとうございました！シリアスな雰囲気がとても好きなので最高でした！ (2022年1月11日 16時) (レス) id: cb251bc2db (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：aKa | 作成日時：2021年12月26日 13時
