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口元に差し出した苺に彼女の控えめに開かれた唇が近付く。
そのままもう少し口を大きく開くと一口でぱくり。
口元を手で覆いながらモグモグと咀嚼していく様子に目を細めると次いでどれにしようかフルーツを選ぶ。
「次は…メロン、はい、あーん」
程よく熟れた果汁多めのメロン、先程の苺よりも大きめの果肉は一口で食べるには無理がありそう。
再び口元に差し出すと口を開いて一口で…とはさすがに無理があるようで悩んだ結果半分程かぶりつく。
溢れる果汁が彼女の唇を濡らすと顎を伝い下に添えていた俺の掌へと滴り落ちてくる。
その様子に思わず生唾を飲み込んだ。
『んん…、んっ…、ごめんなさい、零れちゃった』
ごくりと果実を飲み込んだ彼女が申し訳なさそうにしているも気にすることなく彼女の口元を優しく拭いていく。
Aちゃんの唇から顎を伝って滴ってきた甘い果汁、舐めとってしまいたい、なんて思わず変態的な思考が頭をよぎったが、おしぼりで自分の手も拭う。
「んはは、おいしい?」
『…甘くておいしいです』
満足げに笑顔で頷いた彼女にきゅん、とときめき落ち着かせるように酒を流し込んでいく。
彼女と体を寄せ合ってゆっくりお酒を飲みながら会話に花を咲かせる。
そんな幸せな時間にも終わりは来るもので…延長の有無に時間を確認した彼女はチェックを要求。
一旦下がる黒服を確認してから彼女の手を取り自らの頬へと寄せる。
「今日来てくれてほんとにありがとう、幸せな時間だったよ」
『それはわたしのセリフですよ、すっごく楽しかったです』
「俺のこと指名してくれたのも嬉しかった…、ね、お見送り今日も手繋いでこ?」
『ふふ、はい』
会計を済ませた彼女の手を再び取って立ち上がると出入口までエスコート、扉を開けるとあの時と同じ様な肌寒さ。
「じゃあ、気を付けて…寒いから…」
『帰ったらちゃんと暖まります』
「あ…」
『ふふ、初めて来た時も帰ってちゃんと暖まりましたよ』
「そ、っか…、んはぁ、ええ子やね」
笑顔の彼女の頭をさらりと撫でると繋いでいた手をゆっくり離す。
手を振りながら去っていく彼女の背中をいつまでも見ていたい。
あの道を右に曲がるともう見えなくなってしまう。
でも彼女は…曲がる前にこちらを振り返りもう一度笑顔で手を振ってくれるんだ。
あの時と同じように。
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aKa(プロフ) - リュウさん» コメントありがとうございます!何度も読んで頂けてるなんて、嬉しい限りです。こちらこそ作品を読んで頂いてありがとうございます、これからも頑張ります! (2022年6月20日 17時) (レス) id: 7ba2c9d64a (このIDを非表示/違反報告)
リュウ(プロフ) - 急なコメント失礼します。この小説が好きで何度も読んでいるのですが、特にループ説が好きです。これからも素敵な小説を書いてください。応援しています。そして、素敵な小説を書いてくださりありがとうございます。 (2022年6月19日 2時) (レス) id: e1f1d0048f (このIDを非表示/違反報告)
aKa(プロフ) - 眠ネムさん» コメントありがとうございます!楽しみにしていただけているようで本当に嬉しいです。今宵シリーズは定期的に挟んでいきたいなと思うくらい楽しんで2人を動かしてます。そんな2人を好いてくれてありがとうございます。これからもよろしくお願いします! (2021年12月24日 16時) (レス) id: 7ba2c9d64a (このIDを非表示/違反報告)
眠ネム - コメント失礼します。最近この小説を読む事が、密かな楽しみとなりました。今宵シリーズの2人がとても好きです。これからも応援しています。 (2021年12月24日 13時) (レス) @page42 id: e1ee7cfe80 (このIDを非表示/違反報告)
aKa(プロフ) - りこさん» コメントありがとうございます!ループ説は書きたかった作品なので、反応していただけてとても嬉しいです。これからもマイペースに更新していきますので、よろしくお願いします! (2021年12月18日 23時) (レス) id: 7ba2c9d64a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aKa | 作成日時:2021年12月8日 23時