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『一虎へ
元気にしてますか。これからは圭ちゃんに代わって私が手紙を書きます。どうせ他に手紙書いてくれる友達いないんでしょ?私が話し相手になってやるから、これから送る手紙、ちゃんと読んでよね。あと、返事書かなかったら顔の形が変わるまでぶん殴ってやるから覚悟しとけよ。
圭ちゃんのこと、最近ようやく受け入れられるようになった。私は、一虎のこと恨んでない。きっと圭ちゃんが悲しむから。それに、一虎が今度こそちゃんと更生できるって信じてるから。シャバに出たら、一緒にツーリング行って酒飲み交わして、一日中遊び通そうな。いつかまた会える日を楽しみにしています。
名取Aより』
相変わらず物騒な女。だけど、手紙から滲み出るあたたかさに、涙が溢れてくる。ポタポタッと落ちた涙が手紙に染みていく。手紙の文字が涙で滲んで消えてしまわないよう、必死に涙を拭った。しかしどうしてか。次々と溢れ出して止まりそうにない。
「ごめんっ…昴、ありがとう…!」
声を押し殺して、ひたすら泣いた。塀の中に届けられる手紙はいつしか、オレの拠り所になった。今度こそ更生して、胸張ってアイツに会えるその日まで、生きようと思った。
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新しい春がきた。あれからAさんは宣言通り、帝山高校に首席で合格した。Aさんはずっと勉強で忙しかったようでなかなか会うことができなかったが、今日は一緒に出かけようと声をかけてくれたのだった。正門のところで待ってるよ、というメールを見て急いで教室から飛び出した。
下校中の他の生徒がちらほらと正門付近に集まっているのが見える。"帝山高校の制服だ"、"あの人綺麗、モデルみたい"。そんな声があちこちから聞こえてくる。急いでそこへ向かうと、オレの大好きな人が待っていた。
「Aさん!」
「あ、千冬!思ったより早かったね」
ニコッとこちらに顔を向けて微笑むAさん。胸元まで伸びた髪に、リボンとスカートの女子の制服。もう、あの頃の昴さんの面影はなかった。
さっきよりもギャラリーの数が増えている。Aさんが綺麗なのは重々承知の事実だが、他の生徒に囲まれてしまい身動きができない状態だ。道を開けるため口を開こうとしたが、先に声を発したのはAさんだった。
「…チッ、テメェらさっきから何ジロジロ見てんだコラ!!」
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ベリーショート(プロフ) - seayouさん» 素敵なコメントをくださりありがとうございます!この作品は絶対完結まで持っていこうと思うので、最後までお付き合いしてくださると光栄です! (2021年8月20日 1時) (レス) id: 2d5afa7553 (このIDを非表示/違反報告)
seayou(プロフ) - はじめまして!次の話をワクワクしながら読ませていただいてます!本当に面白くて、次の話を読むのが楽しみです!語彙がなくてこの素敵な作品を「面白い」としか表現できない自分が憎いです…これからも頑張ってください!応援してます! (2021年8月19日 23時) (レス) id: 7ae5cb69bd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ベリーショート | 作成日時:2021年8月18日 3時