05. ページ5
「Aー、早く来いよ！」
どうやら到着したのは私が最後のようだ。圭ちゃんに呼ばれ、最後の階段を登り切り屋上へ出た。扉を抜けた瞬間風に煽られるものの、圭ちゃんが会わせたいという人物へと視線を向けた。
見たことがある顔。すぐに思い当たった。
「あ、昨日の金髪リーゼント！」
私の声に驚いた様子の2人が、えっ、という声を上げた。
「んだよA、知ってたのか？」
「いや、昨日圭ちゃんの教室覗きにいった時見かけただけなんだけどさー」
放課後圭ちゃんと話していたあの金髪リーゼントだった。会わせたい人ってのは、彼のことだったのか。
戸惑う金髪リーゼントに気づいた圭ちゃんに、自己紹介しろやと促され、ズボンのポケットに手を突っ込んだまま口を開いた。
「
以前圭ちゃんに目つきが悪いと言われたこともあり、なるべく怖がらせないよう笑顔を作ってみる。ポケットから右手を抜き、金髪リーゼントの前に差し出した。
「1年1組の松野千冬です！よろしくお願いします！」
金髪リーゼントもとい、千冬くんも右手を出し、握手をした。しかし、気のせいかさっきから視線がうるさい。
「…何か言いたそうだけど、どうかした？」
そう聞かれると思っていなかったのか否か、千冬くんは一瞬驚いた後、えーっと…と気まずそうにしながら言葉を紡いだ。
「Aさんって、その…男っスか？女っスか？」
気ィ悪くしたらすみません、と言って千冬くんは下を向いてしまった。何だそんなことか、と思い安堵した。隣にいた圭ちゃんが馬鹿にしたように笑ってくるため脇腹を小突いてやった。
「ごめん、男子の制服着てるからわかんないよね。私は女だよ」
紛らわしくてごめんねーと言うと、千冬くんはこっちこそなんかすみません！と謝ってくるもんだから、なんだかおかしくて笑ってしまった。
「ウチ、めっちゃ貧乏でさー、制服買うの勿体無いから死んだ兄貴のお下がり着てるんだ。ちょっとだけデカイけど、スカート履くよりこっちのが良いんだよね」
男子の制服を着てる理由。これで何回目だろうか、今まで同級生にも散々答えてきたことだった。側から見たら異質だろう。しかし、兄の制服を着ていると、強くて優しい兄のようになれそうな気がして私は好きだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 83人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ベリーショート(プロフ) - seayouさん» 素敵なコメントをくださりありがとうございます！この作品は絶対完結まで持っていこうと思うので、最後までお付き合いしてくださると光栄です！ (2021年8月20日 1時) (
レス) id: 2d5afa7553 (このIDを非表示/違反報告)
seayou(プロフ) - はじめまして！次の話をワクワクしながら読ませていただいてます！本当に面白くて、次の話を読むのが楽しみです！語彙がなくてこの素敵な作品を「面白い」としか表現できない自分が憎いです…これからも頑張ってください！応援してます！ (2021年8月19日 23時) (レス) id: 7ae5cb69bd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ベリーショート | 作成日時：2021年8月18日 3時
