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「離して！！私も圭ちゃんのところに行くの！！」
「そんなことしたって場地さんには会えないんスよ！！」
力尽くで千冬を引き剥がそうにも、それ以上の力でしがみついてくる。ついには力負けし、2人もろとも階段の踊り場まで転げ落ちた。
「…私のこと突っぱねておきながら、今更私を助けようとしないでよ…！！」
情けなく大声を上げて泣きながら、止まらない涙を必死に拭い続けた。千冬は複雑な表情を浮かべた後、力強く私を抱きしめた。圭ちゃんがいなくなって、人肌が恋しくなって。触れたあたたかさにあの日の光景が蘇る。
「私っ…圭ちゃんと、ずっと一緒にいたかった…！！圭ちゃんに会いたいよ…！！」
千冬の背中に手を回して、私はさらに泣き続けた。
「オレだって…！会いてぇよ…！！」
千冬はそう言って、静かに涙を流した。コンクリートの壁に、2人の声がこだまするように響き渡っていた。
.
泣き腫らした目を擦りながら、私は千冬の手を引いてとある公園に来ていた。寂れた古いブランコに2人並んで腰掛け、ただただ静かな時間が流れていく。
「…圭ちゃんと初めて出会ったのも、この公園だった」
先に沈黙を破ったのは私だった。千冬は何も言わずに、次の言葉を待っていた。
「5歳の頃、母親が家を出ていった時。こうして1人でブランコに座ってたら、圭ちゃんが来たの。もうすぐ日が暮れるぞ、帰んねーの？って。それ聞いて、母親のこと考えてたら涙が出てきた。圭ちゃんは、私が泣き止むまでずっと抱きしめてくれた」
ぎゅ、とブランコの鎖を持つ手に力が入る。圭ちゃんは昔から変わらない。仲間思いで、なんだかんだ一緒にいてくれる人だった。じわり、また視界が歪んでいく。ぬるい涙が頬を伝っていくのは、これで何回目だろうか。もう拭うことすら諦めた。
「千冬…あの日の圭ちゃんみたいに、私のこと、抱きしめてくれる…？」
ボロボロと涙が溢れ出てくる。圭ちゃんにはもう2度と会えないんだって。それを認識したら、どうしようもない寂しさに襲われた。私は圭ちゃんに、何をしてあげられたんだろうか。
千冬はブランコから降りると、そっと私を抱きしめてくれた。次第にその腕には力がこもっていき、大事なものを離さないように抱き留めている。触れた優しさと体温が、いい表せないほどにあたたかくて。あの日の圭ちゃんみたいだなんて思って、また涙が溢れた。
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ベリーショート(プロフ) - seayouさん» 素敵なコメントをくださりありがとうございます！この作品は絶対完結まで持っていこうと思うので、最後までお付き合いしてくださると光栄です！ (2021年8月20日 1時) (
レス) id: 2d5afa7553 (このIDを非表示/違反報告)
seayou(プロフ) - はじめまして！次の話をワクワクしながら読ませていただいてます！本当に面白くて、次の話を読むのが楽しみです！語彙がなくてこの素敵な作品を「面白い」としか表現できない自分が憎いです…これからも頑張ってください！応援してます！ (2021年8月19日 23時) (レス) id: 7ae5cb69bd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ベリーショート | 作成日時：2021年8月18日 3時
