検索窓
今日:32 hit、昨日:2 hit、合計:39,547 hit

31. ページ31

千冬のことを思い浮かべていると、自然と顔が緩んでいくのがわかる。エマちゃんは何やら含みのある笑い方をすると、テーブルに乗り出していた体を戻した。


「A、ウチわかっちゃったよ。それは恋してる顔だね」

頬杖をつきながらエマちゃんは艶美に笑った。その言葉を聞いて一気に恥ずかしくなり、ブワッと顔に熱が集まってくる。


「なっ…はぁ!?なんでそうなるの!?」

「見てれば分かる」

Aにもとうとう春が来たかぁ、なんて言って頷くエマちゃんに待て待てと手を振って動きを止めた。


「そもそも私は…好きっていう気持ちがよくわからない」

ストローを指先で掴み、くるくると氷をかき混ぜながら言った。それを聞いたエマちゃんが、しょうがないなぁと声に出した後、私の頬を両手で挟んできた。


「いい?A。ウチが特別に教えてあげる。恋って、するんだって意気込んでからするものなんかじゃなくて、いつの間にかしてるものなんだよ。Aは今、相手のことをどう思ってるの?」

じっ、とエマちゃんと視線が交わる。私が千冬のことをどう思っているのか。少し考えた後、ゆっくりと口を開く。

「千冬は…何というか、弟みたいな感じだった。一緒に笑って、遊んで、お喋りして。一緒にいてすごく楽しい」


けど、と言葉を続ける。


「最近はなんか、うまく言えないけど、ふとした瞬間にすごくドキドキする。真剣な眼差しとか、微笑みかけてくれた時とか…千冬を見てると心臓がドキドキする」

Aさん!と笑いかけてくれる千冬の顔が目に浮かぶ。千冬と話していると、時間があっという間に過ぎるほど楽しくて。ずっと笑っていられるんだ。


「できる限り、千冬とずっと一緒にいたいって…思います」

声に出したら、なんだか恥ずかしくなってきた。それまで交わっていた視線を()らし、エマちゃんから顔を背けた。エマちゃんは私の言葉に満足したように微笑むと、そっと頬から手を離した。


「A、それが恋心ってやつだよ。好きな人のこと考えるだけでドキドキして、幸せな気持ちになれるの。もし、その千冬くんが他の女の子と仲良さそうにしてたらどう思う?」

「…!それは嫌」

想像しただけでイラッとした。独占欲だろうか、黒い感情が胸の内で渦巻いていくのを感じる。


「これはもう確定だね。Aは千冬くんのことが好きなんだよ」

32.→←30.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (37 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
83人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ベリーショート(プロフ) - seayouさん» 素敵なコメントをくださりありがとうございます!この作品は絶対完結まで持っていこうと思うので、最後までお付き合いしてくださると光栄です! (2021年8月20日 1時) (レス) id: 2d5afa7553 (このIDを非表示/違反報告)
seayou(プロフ) - はじめまして!次の話をワクワクしながら読ませていただいてます!本当に面白くて、次の話を読むのが楽しみです!語彙がなくてこの素敵な作品を「面白い」としか表現できない自分が憎いです…これからも頑張ってください!応援してます! (2021年8月19日 23時) (レス) id: 7ae5cb69bd (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ベリーショート | 作成日時:2021年8月18日 3時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。