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「コイツの後ろに人乗せて走るの、千冬くんが初めて!」

「マジっスか!?嬉しいっス!!」

風の音に負けないよう、いつもより大きい声で話す。思いがけないAさんの言葉に嬉しくなって思わず頬が緩む。

眠らない東京の街中をバイクで突っ切っていけば、あっという間に海までたどり着いた。近くにバイクを()めたAさんと一緒にお台場海浜公園を歩いていく。ライトアップされたレインボーブリッジが、夜の闇に輝いているように見えてとても綺麗だった。

手すりにもたれ掛かりながら、Aさんと2人並んで夜の海を眺める。

「うざかったでしょ、ウチの親父。なんか色々ごめんね!」

ハハッ、と目を細めて笑うAさん。親父さん面白い人っスね、とオレも笑いながら返した。


「私みたいな奴の彼氏だなんて、勘違いされて嫌だったでしょ。親父が起きたらもう一発ぶん殴っとくからさ、許してね」

あの時のことを気にしていたみたいで、Aさんはごめんと片手を顔の前に挙げて申し訳なさそうに笑っていた。


「…オレ、別に嫌じゃなかったです」

精一杯、本心を言葉に出して伝えた。Aさんは驚いた顔をした後、海の方へと顔を向けた。

「…そっか」

良かった。小さく、Aさんがそう呟いたような気がした。ショートヘアの黒髪からちらりと見えたその横顔は、耳まで赤く染まっていて。オレの方がなんだか恥ずかしくなって、そっとAさんから視線を逸らした。


それからのことは、あまりよく覚えていない。学校のことや、東卍のことを話しながら、Aさんと2人で笑い合った。潮風が運んでくる海の匂いを感じながら、楽しい時間はあっという間に過ぎていく。


「そろそろ帰ろっか!」

Aさんの言葉に頷き、バイクを駐めていたところまで歩いていく。来た時と同じようにAさんの腰に手を回せば、ハーレーが独特の排気音を轟かせながら走り出した。


「あのっ、Aさん!」

「んー?なーに千冬くん」

信号待ち。ここぞとばかりに声を発するとAさんは振り返らずに反応してくれる。


「その、嫌じゃなければ、オレのことくん付けじゃなくて、千冬って呼んでください」

前から思っていたこと。Aさんはオレの事、なんだか弟扱いしているように感じる。年下とかじゃなく、オレを1人の男として意識して欲しくて。思い切って言葉にしてみた。

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ベリーショート(プロフ) - seayouさん» 素敵なコメントをくださりありがとうございます!この作品は絶対完結まで持っていこうと思うので、最後までお付き合いしてくださると光栄です! (2021年8月20日 1時) (レス) id: 2d5afa7553 (このIDを非表示/違反報告)
seayou(プロフ) - はじめまして!次の話をワクワクしながら読ませていただいてます!本当に面白くて、次の話を読むのが楽しみです!語彙がなくてこの素敵な作品を「面白い」としか表現できない自分が憎いです…これからも頑張ってください!応援してます! (2021年8月19日 23時) (レス) id: 7ae5cb69bd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ベリーショート | 作成日時:2021年8月18日 3時

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