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「お父さん、来週またお仕事で海外に行ってくるから。A、暁、良い子にして待っててね」

そろそろお(いとま)しようと、場地さんと共に玄関へ向かっていると、寂しそうな顔をして親父さんは言った。Aさんと暁は顔を見合わせた後、いたずらっ子のように笑うのだった。


「んーだよ親父、1週間もウチにいんの?私圭ちゃん家泊まるわー」

「オレも」

2人の言葉に酷い!とまた嘘泣きをした親父さん。圭介くん聞いてよウチの子が辛辣!と言って場地さんに泣きつく姿はまるで子どもみたいで、場地さんも呆れたように笑っていた。




.




「…あれ。姉ちゃん、どっちか忘れ物してるよ」

圭ちゃんと千冬くんを見送ってしばらく経った後。酔い潰れて眠ってしまった親父にブランケットをかけてやり、暁の呼ぶ声に反応し目を向けると、暁の手には携帯が握られていた。


「あ、それ千冬くんのじゃん」

届けてくる、と言って暁から携帯を受け取り、サンダルに足を突っ込んで玄関を出た。階段を降りて千冬くんの家の前にたどり着き、インターホンのボタンを押した。数秒でドアが開き、千冬くんが出向いてくれる。


「Aさん?」

「よっ。千冬くんの忘れ物」

はい、と持っていた携帯を手渡した。全然気づかなかった!ありがとうございます、と千冬くんがお礼を言ってくれたので、いえいえと笑顔を向けて返した。じゃあこれで、と階段に足をかけたところで、あの!と大きな声で呼び止められる。

驚いて千冬くんを振り返ってみると、ほんのり頬を染めた千冬くんがゆっくりと口を開いた。


「…この後って、時間、ありますか…」

もう少し話したいっス。千冬くんの言葉に、世界が止まったような感覚がした。じわりと広がるこのあたたかさは、なんと例えたら良いか。今はまだわからない。けれど、千冬くんともう少し一緒にいたいのは確かだ。


「…うん。私も。そうだ!千冬くん、寒くない格好して下で待ってて!」

良いこと思いついた、と内心呟いた後、急いで階段を登り準備をしに家に帰った。

「暁、ちょっと出かけてくるわ!」

「えぇ!今から!?」

むくれる暁に、冷凍庫に入ってる私のアイス食べて良いからと伝え、パーカーと鍵を引っ掴んで再び家を出た。

団地の階段を下まで駆け降りると、先に待ってくれていた千冬くんに声をかけ、駐輪場へと向かった。黒い車体の愛機に(またが)り、エンジンをかけて千冬くんの元へと向かう。

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ベリーショート(プロフ) - seayouさん» 素敵なコメントをくださりありがとうございます!この作品は絶対完結まで持っていこうと思うので、最後までお付き合いしてくださると光栄です! (2021年8月20日 1時) (レス) id: 2d5afa7553 (このIDを非表示/違反報告)
seayou(プロフ) - はじめまして!次の話をワクワクしながら読ませていただいてます!本当に面白くて、次の話を読むのが楽しみです!語彙がなくてこの素敵な作品を「面白い」としか表現できない自分が憎いです…これからも頑張ってください!応援してます! (2021年8月19日 23時) (レス) id: 7ae5cb69bd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ベリーショート | 作成日時:2021年8月18日 3時

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