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「姉ちゃん、ただいま」
暁が一声かけて、家の中へと招き入れてくれる。おかえりー、という声と共に、Aさんも玄関へとやってきた。
「あれ？千冬くんじゃん。いらっしゃい」
「お、お邪魔します…！」
ふわり、微笑むAさんに緊張しながらも挨拶をする。顔から視線を下げてみれば、Aさんはパーカーにエプロンという姿をしていた。それがなんだか新鮮で、ブワッと顔に熱が集まっていくのがわかった。
「あ、今日姉ちゃんが料理当番だっけ」
「そうだよ〜、暁、珍しく帰り遅いと思ったら千冬くんと一緒にいたんだね」
手洗っておいで、とAさんは促し、暁はランドセルを背負ったまま洗面台へと歩いて行った。
「なんもないけど、ゆっくりしていってね。良かったらご飯食べてってよ」
お腹空いてるでしょ？と言いながらAさんは笑った。その光景がとても艶かしくて目が離せなくなる。かろうじて、ありがとうございますと声に出すことができ、暁に続いて洗面台を借りて手を洗った。鼻をくすぐるカレーの良い匂いが漂っていた。
.
「…あ？暁、その怪我どーしたの？」
ランドセルを置き、服を着替えた後食器を準備していた暁を見て、顔や手足にすり傷ができていることに気がついた。洗面台から戻ってきた千冬くんも会話を聞いていたようで、気まずそうに顔を曇らせている。
「…転んだ」
ボソッと呟いてそっぽを向く暁に、圭ちゃんの言っていた言葉が蘇る。わかりやすい嘘、ね。たしかにそうだ。
「…嘘。明らかに不自然だもん」
見せてみ、と暁の肩に手を置き、こちらを向かせる。相変わらず視線は交わらないままだが、抵抗はしなかった。
「あーあー、綺麗な顔に傷なんてつけちゃって。まだ痛い？」
「ううん、さっき千冬兄ちゃんが手当てしてくれたから、平気」
暁は千冬くんの顔を見て微笑んだ。それにつられるように、私も千冬くんの顔を見上げる。
「姉弟共々、世話になっちゃったね。千冬くん、本当にありがとう」
千冬くんに向かって頭を下げた。暁も一緒に礼を述べ頭を下げる。
「いや！そんなに大したことしてないんで！顔あげてください！」
ワタワタして謙遜し続ける千冬くんに、もう一度ありがとうと言って微笑んだ。それを見た千冬くんは、照れ臭そうに笑っていた。そして、私は再び暁に向き直る。
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ベリーショート(プロフ) - seayouさん» 素敵なコメントをくださりありがとうございます！この作品は絶対完結まで持っていこうと思うので、最後までお付き合いしてくださると光栄です！ (2021年8月20日 1時) (
レス) id: 2d5afa7553 (このIDを非表示/違反報告)
seayou(プロフ) - はじめまして！次の話をワクワクしながら読ませていただいてます！本当に面白くて、次の話を読むのが楽しみです！語彙がなくてこの素敵な作品を「面白い」としか表現できない自分が憎いです…これからも頑張ってください！応援してます！ (2021年8月19日 23時) (レス) id: 7ae5cb69bd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ベリーショート | 作成日時：2021年8月18日 3時
