16. ページ16
「はぁ？助けてやったんだから、まずはありがとうってちゃんと言えよ」
「だから！不良の助けなんかなくても平気だって言ってんだよ！そんな見た目して不良じゃないなんて言わせないぞ！」
悔しそうに涙を拭った男の子はふらっと立ち上がると、散らばった持ち物を集め始めた。オレもそれに
ふと目に止まった、
「お前もしかして、Aさんの弟？」
ピクッと反応した少年は、驚いた顔をしてこちらを振り返った。黒いサラサラの髪と長い睫毛に縁取られたぱっちりとした目は、やはりAさんに似ている。
「なんで姉ちゃんのこと知ってるんだよ」
「やっぱりな。オレ、お前の姉ちゃんと友達なんだ」
ほらよ、と言って拾った教材を男の子に手渡した。男の子もさっきの言葉に警戒を解いたようで、今度はありがとう、と返してくれた。
「オレ、名取暁。兄ちゃん名前は？」
「松野千冬だ。よろしくな、暁」
自分より一回り小さな手と握手をする。手が離れた後、バツが悪そうに暁が口を開いた。
「千冬兄ちゃん、さっきのことは姉ちゃんには内緒にして」
そう言ったきり、暁は口を閉じて俯いてしまった。ランドセルの肩ベルトをぎゅっと握りしめている手は小刻みに震えていた。
「わかった、約束な。でも、オレには話してくれてもいいんだぞ」
暁の頭に手を乗せて微笑みかけると、顔を上げた暁は再び目に涙を浮かべていた。堪え切れずに泣き出してしまった暁の手を引き、近くにあったベンチへと向かい並んで腰掛けた。
「確かにウチは貧乏だけどっ…オレ誰にも迷惑かけてない！でも、さっきみたいにいつもいじめられる。やり返してやりたいけど、あんなにいっぱいいたら無理なんだ…！」
心底悔しそうな表情。やっと落ち着いてきたようで、さっきよりも嗚咽が小さくなっていることがわかる。オレは暁の話に、ただただ耳を傾けて聞いていた。そして暁はやがて、Aさんについて話し始めた。
「オレ、本当は姉ちゃんに不良やめてほしい。喧嘩してボロボロになって帰って来るところなんて、もう見たくない。…姉ちゃんにだけは、幸せになってほしいから」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 83人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ベリーショート(プロフ) - seayouさん» 素敵なコメントをくださりありがとうございます！この作品は絶対完結まで持っていこうと思うので、最後までお付き合いしてくださると光栄です！ (2021年8月20日 1時) (
レス) id: 2d5afa7553 (このIDを非表示/違反報告)
seayou(プロフ) - はじめまして！次の話をワクワクしながら読ませていただいてます！本当に面白くて、次の話を読むのが楽しみです！語彙がなくてこの素敵な作品を「面白い」としか表現できない自分が憎いです…これからも頑張ってください！応援してます！ (2021年8月19日 23時) (レス) id: 7ae5cb69bd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ベリーショート | 作成日時：2021年8月18日 3時
