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「保冷剤持ってきました。冷やすんで他にも痛いところあったら教えてください」
「ありがとう、本当に助かる」
タオルに包んだ保冷剤を、優しく頬に当てがってくれた千冬くんにお礼を言う。気にしないでくださいと言って微笑む彼は本当に良い子だ。
「にしても誰にやられたんだ?まさか1人で喧嘩してたんじゃねーだろうな?」
千冬くんの飼い猫、ペケJと猫じゃらしで戯れながら、圭ちゃんが口を開いた。猫好きは相変わらずだなと思いながらも、それに答える。
「…名前は忘れた。前にボコった暴走族名乗る雑魚共がまた喧嘩ふっかけてきたから相手してたんだよ。あと、途中からマイキーが来てくれた」
ことの経緯を大まかに説明すると、2人は納得いかないとでも言いたげな表情を浮かべていた。
「女1人に他勢で襲いかかるなんて、汚ねぇ奴らっスね」
自分のことじゃないのに、悔しそうに顔を歪ませる千冬くんを見てもどかしい気持ちになる。優しいんだなと思った。
「まぁ、私も散々殴ったし!マイキーが脅したからもう絡んでこないと思う。それに、金的喰らわせてやったから相手の男しばらく痛がってるよ」
してやったり顔を浮かべる私とは対照的に、2人は青ざめた顔でズボンを押さえていた。私にはわからないが、男性にとっては想像に難くない痛みなのだろうと察した。
「まぁとにかく、これ以上に酷い怪我がなくてよかったっス」
見えるところにできたアザに湿布を貼ってくれる千冬くん。心なしか、耳が赤いように見える。兄弟と圭ちゃん以外に喧嘩の傷を手当てをしてもらったのは、千冬くんが初めてだった。なんだかくすぐったい気持ちになる。
できましたと声がかかり、千冬くんが救急箱を持って立ち上がった。ありがとう、とお礼を言えば、またあの可愛らしい笑顔が返ってくる。なんだか弟が増えたみたいで、ふふ、と思わず笑ってしまった。
.
昼に会った時とは打って変わり、帰宅したAさんの顔は赤黒く腫れ上がっていて所々出血していた。
捲られた袖から見える白くて細い腕には、殴られたであろう赤い大アザができている。転んだ、とAさんは言ったが、場地さんの言う通りわかりやすい嘘だった。喧嘩をしてきたんだと、一目見たらわかる。
全然痛くない、と言ってこの場をくぐり抜けようとするAさんの手首を、気がついたら掴んでいた。
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ベリーショート(プロフ) - seayouさん» 素敵なコメントをくださりありがとうございます!この作品は絶対完結まで持っていこうと思うので、最後までお付き合いしてくださると光栄です! (2021年8月20日 1時) (レス) id: 2d5afa7553 (このIDを非表示/違反報告)
seayou(プロフ) - はじめまして!次の話をワクワクしながら読ませていただいてます!本当に面白くて、次の話を読むのが楽しみです!語彙がなくてこの素敵な作品を「面白い」としか表現できない自分が憎いです…これからも頑張ってください!応援してます! (2021年8月19日 23時) (レス) id: 7ae5cb69bd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ベリーショート | 作成日時:2021年8月18日 3時