01. ページ1
ギィ…と軋んだ音を立てて、ブランコが小さく揺れる。ビルの間に沈んでいく夕日を背中に受けて、呆然と足元の土を見下ろしていた。
いつまでそうしていたのだろう。ふと気がつくと、誰かが目の前にいて、伸びた私の影を踏んで立っていた。
「そろそろ日が暮れるぞ。帰んねーの？」
声をかけられ、顔を上げる。目の前にいたのは艶のある黒い髪と犬歯が特徴的な、同い年くらいの男の子だった。男の子の
「お、お母さんが…」
その時、
「お母さんが…いなくなっちゃった…！」
顔をぐしゃぐしゃにして、大声を上げて泣いた。急に泣き出した私に、男の子も酷く動揺していた。
5歳の初夏。低収入の父親に痺れを切らした母親が家を出た。兄と私と、生まれたばかりの弟を残して。さよならも告げず突如去っていった母親に対して、何を想っていたのだろう。数年後には忘れてしまうが、少なくともこの時は、涙を流すほどに母親が恋しかった。
男の子はしばらく考える素振りを見せると、そっと私を抱きしめてくれた。触れた優しさと体温が、いい表せないほどにあたたかくて、嬉しかった。私は、心配した男の子の母親が迎えに来るまで、ひたすら泣き続けていた。
男の子の名前は、場地圭介。この出会いをきっかけに幼馴染となり、私にとってかけがえのない存在となった。
星が輝く夜道を、手を繋いで歩いていく。同じ団地に住んでいるということがわかり、私たちはどんどん仲良くなっていった。圭ちゃん、と呼ぶのが私の口癖になった。
一緒に遊んで、笑って、たまに喧嘩して。でも最後には決まって仲直りして。
なんでもないような日常が、キラキラと輝いて見えた。
そんな日々が、ずっと続いていくんだと、私は思っていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 83人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ベリーショート(プロフ) - seayouさん» 素敵なコメントをくださりありがとうございます！この作品は絶対完結まで持っていこうと思うので、最後までお付き合いしてくださると光栄です！ (2021年8月20日 1時) (
レス) id: 2d5afa7553 (このIDを非表示/違反報告)
seayou(プロフ) - はじめまして！次の話をワクワクしながら読ませていただいてます！本当に面白くて、次の話を読むのが楽しみです！語彙がなくてこの素敵な作品を「面白い」としか表現できない自分が憎いです…これからも頑張ってください！応援してます！ (2021年8月19日 23時) (レス) id: 7ae5cb69bd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ベリーショート | 作成日時：2021年8月18日 3時
