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終電のことを考え、飲み会は二十三時前にはお開きになった。Aの分は男三人がそれぞれ出した。
「すいません、ご馳走様でした」
店を出てみんなで駅へと歩く道中、Aは三人に礼を言った。隣を歩いていた海が「いえいえ」と応え、前を歩く祐基と拓弥は振り返って微笑む。
「次からは私にも払わせてください」
口から自然と出た「次から」という言葉に、海は嬉しそうににっと笑顔を見せた。
前を歩く二人は、じゃれ合ったり、からかったり、物を奪ったりしながら歩いている。飽きるタイミングも一緒で、暫くすると大人しくなる。
「お前ら小学生か」と海が呆れた。
Aは大きく息を吸った。湿っぽい風の中に夏の匂いを感じてかすかに微笑んだ。
海はその横顔を観察しながら、自分の大学時代のある記憶を思い返していた。
稜雅の大学の学祭に訪れた時に彼のそばに立っていたのが、海が見た最初のAの姿だった。挨拶を交わした訳でもないので彼女は覚えていないが、海の方はとても印象的で、その記憶に残っていた。
単に容貌が整っているだけではない。初めて見た時と同じように思った。まとっている雰囲気がまた独特で、見る者を捉えるのだ。
おまけに髪を切って更に悩ましくなってしまった。
祐基が惚れるのもわかるな、と思った。
やがてぱらぱらと雨が降ってきて、海は考えるのを中断した。四人は駅まで急ぎ足で移動した。
駅近くの信号で、途中ちかちかと点滅して、海、拓弥、祐基は慌てて横断歩道を渡ろうと走った。
Aも走ろうとはしたが、高いヒールを履いている為思うように足が動かせない。大人しく次に青になるまで待とうと歩みを止めた。
渡りきろうとしたところでふと振り返って、Aに気が付いたのは祐基だけだった。
目が合ったと思うや否や、彼はぐんと方向転換をして二倍くらいのスピードで走ってきた。
戻ってきたタイミングでちょうど赤になる。
「大丈夫…？どした…？」
息を切らしながら何かあったのかと心配そうにこちらを伺う祐基の姿に、Aの胸はときめく。また祐基の声というのは微妙に掠れていて、それが今は酔いが手伝い、とろけそうな甘さが加わっていた。
Aはほとんど反射的に、祐基の靴を自分のヒールの爪先の部分で軽く小突いた。
「実は、さっき誰のことも蹴ってないんです。だから…今」
それを聞くと彼は一瞬驚いた顔をしてから、照れて嬉しそうに微笑んだ。
続く (更新停止中)
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ゆるり(プロフ) - 三谷さん» ありがとうございます！コメント励みになります！ (2019年11月11日 23時) (
レス) id: ae282f000e (このIDを非表示/違反報告)
三谷(プロフ) - めちゃくちゃいいです…ユーキ推しにとっては最高です…これからも更新頑張ってください！応援しています！ (2019年11月11日 20時) (レス) id: c80e5d51b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆるり | 作成日時：2019年10月30日 2時
