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「にしてもあいつ贅沢者だな、こんな可愛い子」
海がそう呟くと、拓弥がうんうんと頷いた。それからこのミルクティー美味しそうとか、他愛も無い話が始まった。
Aは二人にばれないように、斜め前に座っていた祐基の顔をそっと見た。視線に気が付いたからなのか、向こうも自分を見ようとしたのか、すぐに顔を上げた祐基と目が合ってどちらからともなく無言で微笑み合った。
嬉しかった。祐基と出会っていなかったら、今頃何処かで塞ぎ込んで、一人で泣いていただろう。
「あー祐基がAちゃんとイチャついてるよ？いいの？海君、いいの？」
冗談っぽく拓弥が声を上げて祐基と海が吹き出した。つられて、Aも屈託のない声を上げて笑い出した。拓弥だけが嬉しそうに、愛嬌のある微笑を口元に湛えて静かに笑っていた。
あまりにも和やかな空気で満ちていた。
「お前ら揃いも揃って何してんの」
しばらく談笑していると、会場から出てきた稜雅がこちらを見て声を上げた。まだ赤い泣いた後の目を見られたくなくて、Aは咄嗟に顔を伏せた。
「おー稜雅今みんなで君の話してたんだよ」
祐基は颯爽と立ち上がり、稜雅の左側から肩を組んでその身を強引に方向転換させた。この場に向かって歩いて来ていたのが、二人とも会場に戻る形になる。
「悪口じゃないだろうな」
「さあどうだろう」
楽し気にふざけ合う二人のその右側に、拓弥の背中が並んだ。「俺も」と海も跡を追う。
会場に入ろうとした所で祐基だけが振り返って、声を出さずに「待ってて」と口の形だけで伝えた。
「はい」
頷いたのを見て、彼は再び前を向いたまま、会話に加わっていった。
三人の、特に祐基の優しさを感じて、冷え切っていた心がだんだん豊かに温まっていくのを感じる。
十分と待たずうちに彼は戻った。
「帰るの？」
立ち上がって帰り支度をしているのを見て、尋ねられた。Aは預けていた黒のチェスターコートに袖を通しながら答えた。
「夜も遅いし、少し疲れちゃったので」
「送ろうか？」
「タクシーなのでここで平気です。今日は本当に、ありがとうございました」
「お二人にも伝えて下さい」と言って顔を上げる。
「気をつけてね」
彼の笑顔に浮かぶ寂し気な感触が一瞬通じたが、Aは呼び止められる前に軽く会釈して、外に向かって歩きだした。
ヒールがカツン、と白い音をたてた。
また会える気がした。
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ゆるり(プロフ) - 三谷さん» ありがとうございます！コメント励みになります！ (2019年11月11日 23時) (
レス) id: ae282f000e (このIDを非表示/違反報告)
三谷(プロフ) - めちゃくちゃいいです…ユーキ推しにとっては最高です…これからも更新頑張ってください！応援しています！ (2019年11月11日 20時) (レス) id: c80e5d51b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆるり | 作成日時：2019年10月30日 2時
