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二階を去った後、ロビーを歩いていると高校の頃仲の良かった海と拓弥に再会した。学生服がきちんとした身なりになっただけで、二人とも漂う空気は変わっていない。三人でテーブルを囲み、昔の思い出話をするとつい会話が弾んだ。
ふと腕の時計を見ると、あれから思いの外時間が経過していることに気が付いた。二人はどうしているだろうと考えたらそればかりが気になって、周りの声が遠くなった。
ぼんやりとしていると、ふいに後ろから肩を叩かれる。振り向くとAが立っていた。
「幸せになって下さいって、言えました」
唇を噛み締めて、彼女は辛うじて涙を制していた。目の縁が赤くなっている。
「そっか、お疲れ」
自分でも驚くほど優しく、柔らかい声がもれた。
「どうしたそんな顔して〜とりあえず座りな！」
浮かない表情をしているAの腕を引いて、拓弥が半ば無理矢理空いた席につかせた。
「ええと…」と祐基は一拍置いて、
「こちらは稜雅の大学時代の後輩のAさんで、こっちは同じ高校の同級生だった海と、拓弥」
とそれぞれに紹介した。
「稜雅さんのことが好きだったんですけど、たったさっき話して、諦めがつきました」
Aは場の雰囲気を明るくしようと、無理して笑った。祐基はその笑顔の向こうに彼女の計り知れない悲しみの底を見たような気がした。
やがて「まあ」と海が口を開いて
「稜雅より良い男なんて星の数ほどいるよ。現に目の前に三人もいる訳だしね」
と、気取ったように言った。
「……はい、ありがとうございます」
ゆっくりAは答えた。それから目を閉じて、まぶたを抑えた後顔を両手で覆い、声を出さずに肩を細かく震わせて静かに泣いた。三人とも、掛ける言葉が見つからず、しばらく黙って眺めていた。
「俺、なんか温かいもの貰ってくる」
拓弥が会場に入って行って、ほんのりと湯気が立ったミルクティーを持って戻ってきた。Aの隣の席に腰を下ろして、「甘いの飲むと多少落ち着くと思う」とそっとカップを差し出す。
恐る恐るミルクティーに口をつける彼女の目には涙が一杯溜まり、それにはロビーのシャンデリアの光がキラキラと反射していた。
「…おいしい」
Aは涙目のまま、満足そうにあどけない笑顔を見せた。硬い蕾が急に綻んで、ふわりと花が咲いたようだった。
まるで映画のワンシーンみたいで、祐基は瞬き一つせずに眺め入った。
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ゆるり(プロフ) - 三谷さん» ありがとうございます！コメント励みになります！ (2019年11月11日 23時) (
レス) id: ae282f000e (このIDを非表示/違反報告)
三谷(プロフ) - めちゃくちゃいいです…ユーキ推しにとっては最高です…これからも更新頑張ってください！応援しています！ (2019年11月11日 20時) (レス) id: c80e5d51b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆるり | 作成日時：2019年10月30日 2時
