祈願の果てに【after Story】3 (ページ43)

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4話ページ43

その頃、サンジとAの買い出しは順調に進み

楽しくトークに花を咲かせていた

賑わう市場には新鮮野菜から活きのいい魚

旬の果物から特産品まで幅広く出品されている

『こんなにあると目移りするね』

ｻﾝｼﾞ「その中で出来るだけ安く、

質の良いものを選べるかが

コックの目利きに重要な事だ」

『じゃあサンジがあれだけ凄い料理を作れるのも

サンジの目が一流だって証拠なわけだ』

ｻﾝｼﾞ「そういう事！」

ここでサンジがさり気なく誕生日について触れてみる

当の本人はただの昔話だと、懐かしむような笑顔で話す

『1回だけ、レイリーさんに祝ってもらったなぁ…

なんだか気恥ずかしくて、昔は強がってたけど

今思えば、祝ってくれる人がいたことって幸せなんだな』

ｻﾝｼﾞ「ま、クルー達にとっては仲間の誕生日とか

祝い事の1つで、恒例行事みてぇなもんだけどな」

『ｸｽｯ…それはそうだね』

全ての買い出しが終了し、船へ荷物を置きに戻る

サンジはこのまま夕食を準備するが

Aは今日は外泊するということになった

島を散策して久しぶりの陸を満喫したいようだ

ｻﾝｼﾞ「1人で大丈夫か？」

『ははっゾロじゃないし、迷子にはならないよ』

ｻﾝｼﾞ「迷子の心配はしてねぇけどな

…そう言えば、ノースでこんな話聞いた事あるか？

世界中の"忘れ物"が集まる店って都市伝説」

『知ってる！懐かしいなぁ…！

見たことも無い道具とかあるかも…って

いつか行ってみたいと思ってた頃があったよ

けど何で突然？』

ｻﾝｼﾞ「いや、俺も急に思い出してさ

そういえば昔聞いたことあったなって

ノース出身はAくらいだし、話す人間もいないだろ？

おれもグランドラインのすげぇ包丁とか

見てみてぇなって思って、ガキの時信じてた」

『サンジはどこまでも思考が料理人だな

んじゃ、もう1回行ってくる

明日の料理、楽しみにしてるよ』

ｻﾝｼﾞ「おう！任せとけ！」

船から足取り軽く飛び降りたAは

1人静かに町を歩き、空気を堪能する

商店街の服やアクセサリーや本や楽器…

視線を左右に忙しく動かすのが少し楽しい

夜には酒屋で久しぶりに酔うまで呑もう

せめて1日くらい、羽目を外してみようか…

1人が楽しいなんて、考えたこともなかったけれど…

耳を澄ませば聞こえてくる、

いつもは聞くことの出来ない周りの喧騒…

自然と早まる靴音は、奏の中へと溶けた…