優しい彼 (ページ10)

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epi 9 ページ10

消灯の時間まであと1時間という所で私は2人の部屋を出た。

自室のドアに手をかけるが、1人になる気になれず、共有スペースに向かった。

「小牧教官…」

ソファに座って窓の外を見る教官があまりにも優しい顔をしていて、胸が跳ねる。

気配を感じとったのか教官は顔をこっちに向けた。

「高本さん。どうしたの？」

「え、いいえ、何となく？です。教官こそどうしたんですか？すごい絵になってました。」

「そう？(笑) 横、良かったら座りなよ。」

そう言ってスペースを空けてくれた。

「じゃ、失礼します。」

そこからは小牧教官が読んでいた新聞の記事の話で盛り上がった。

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ママ…待って。ママが居ないと、誰もいなくなっちゃう。ねぇ…！

「高本さん…！？」

少し驚いたような教官の声で私の意識は取り戻された。

「…あっ、ごめんなさいっ！こんな状態で寝ちゃって…」

「それは、全然いいんだ。でも、大丈夫？うなされてた。」

そう言って教官は私の頬に流れる涙を拭った。

「いえ、全然大丈夫です。ご心配おかけしてしまってすみませんでした。」

優しい教官に全部あったことを話してしまおうか。

でも、話したら母のことは必然的にバレてしまう。

色々な思いが頭を駆け巡る。

すると、小牧教官は優しい顔でこう言った。

「なにかあるならいつでも相談にのるよ。俺は高本さんのそんな顔もう見たくないし。話したくなったらいつでも話してくれたらいい。」

その優しすぎる言葉に一気に涙が溢れる。

小牧教官は私が泣き止むまでただ黙って、頭を撫で続けてくれていた。