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side:宇髄
不死川は真面目な男だったから、俺は彼が苦手だった。そんな真面目の奥底に彼なりの“覚悟”と“贖罪”があると知ったから、そうして俺は彼を認めざるを得なかったのだ。
彼はいつだって合理的だった。彼の意見はいつだって非の打ち所がなかった。
だからこいつの主張を前にして俺は藻掻くのだけれど、いつだって一歩先を歩く不死川に俺は追いつけた試しがない。
彼の背中にはいつだって死が纏わりついている。
｢その幸せな未来で彼女の横にいるのは俺じゃない。｣
その言葉が全てだった。
こいつの苦労も、悲しみも、後悔も、俺はまるで知らない。聞こうとも思わない。
例え知ったとしても、それを理解しようとすることはきっと冒涜に過ぎないだろうから。
言葉をなくした俺たちはひたすらに歩いた。
何処へ行くでもなく、ただ道の続く限り。
中心部へ向かう人々の波を縫うように歩き、その流れに逆らって俺たちは静かな方へと逃げた。どこを見ても、そこには鬼の存在なんてまるで知らない人々が各々の人生の途中を歩んでいた。
肩に落ちる葉。季節はもう、変わろうとしている。
｢じゃあな｣
｢……。｣
｢宇髄……？どうした？｣
｢……今度、その子連れて家来いよ。嫁のうまい飯食わせてやるから。｣
｢生憎、美味い飯は足りてる。｣
｢来いって｣
｢行かねぇよ｣
不死川が笑う。
相変わらずヘッタクソだなあ、お前。
｢────“またな”、不死川｣
既に数歩先を歩く彼の背中は、何を言うでもなかった。
俺はその後ろ姿が見えなくなるまでその場に立ち尽くす。ずっと。ずうっと、立ち尽くす。
瞬きの内に彼奴がこの世から消えてしまいそうだったから。別れ際、彼奴は決まって｢さよなら｣を込めて挨拶を交わす。
まるでその度に、これが今生の別れとでも言うようにだ。
｢…………。｣
なあ、不死川。
風の噂でお前が結婚するって聞いた時、俺、嬉しかったんだぜ。やっとお前にも普通の人生が戻ってきたって。
お前は誰でもない自分自身を一番恨んでいるようだけれど、そんなこと死んでいった仲間たちは望んでいないだろう。
皆お前が大好きなんだよ。皆、お前の幸せを望んでいる。
─────……けれど、それを俺が言うのは余りにも図々しいだろうから。
春と共にやってきた彼女さん。どうか、どうか彼奴に幸せを運んでくれ。俺ができない分まで、どうか。
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柚葉(プロフ) - 一気に読ませていただきました。涙がなかなか止まりませんでした。情景を浮かべると、もう涙が溢れてしまって…。義勇さんとのやりとりも、夢主さんへの想いも、もうたまらなかったです。ありがとうございました！！！ (2021年5月3日 19時) (
レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
Rii(プロフ) - 占ツクでこんなに自然に涙が出た作品は初めてです。感動の一言では安いほどです。読んだこちらが幸せになる本当に綺麗な作品でした。これからも応援させて下さい。急な長文で申し訳ありません。ありがとうございました。 (2021年1月24日 12時) (レス) id: ae2ab4d40a (このIDを非表示/違反報告)
Rii(プロフ) - 初めまして。私も作者様と同じく最終巻の『子孫』という言葉に衝撃を受けた1人です。やっぱり同じ境遇の人いるよな、なんて軽い気持ちで読ませていただいてたのですが、読んでいくにつれて、作者様の言葉使い、ストーリー、表現力に本当に感動致しました。 (2021年1月24日 12時) (レス) id: ae2ab4d40a (このIDを非表示/違反報告)
しぃ(プロフ) - めっちゃ泣きました。感動でした。ありがとうございました(*ﾟOﾟ*) (2021年1月3日 1時) (レス) id: f715447a21 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - レモン紅茶さん» コメントありがとうございます！！お、落ち着いてください……！？笑 語彙力の寄付、有難く受け取らせていただきます^^( そんなに褒めて頂けてとっても嬉しいです！！ (2020年12月24日 22時) (レス) id: debafb75d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆき
| 作成日時：2020年12月6日 17時
