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鬼殺隊を辞めてからというもの、俺は特に日々の生活に何も見出すことはなくのうのうと生きていた。
好きな時に起きて、腹が減れば適当に飯を食べ。書を読んだりして、飽きれば縁側に座り日に当たった。時折聞こえる近所の子供の笑い声を聞きながら、静かに。静かに暮らしていた。
だから特段することなんてない。けれど、俺はあれ以上あの空間に耐えきれず、｢散歩してくる｣と適当なことを言ってAに留守を頼み家を出た。
｢…………元気にしてるか、玄弥｣
何となく行き着いた先は墓石の並ぶ場所。ここら一帯は産屋敷家の私有地であり、ここに眠る誰もが鬼殺隊として命を落とした英雄たちだ。
春風が俺の前髪をぶわりと持ち上げ、頬を撫でる。眠たかった。俺はもう、瞬きをする気にもなれなくって。
その後も知り合いの名を見つけては俺は立ち止まり、手を合わせ。それ以外の見知らぬ名前だって、きっと彼等の人生があった。涙を流す家族がいた。
───……俺、は。
暗雲が心に立ちこめるから、二三度頭を振って気を紛らわす。
俺は知っている。大切な人を失う悲しみを知っている。
自分を不幸だと呪ったことは無い。しかし、俺は決して幸せになっていい人間なんかじゃなかった。俺の両手からは零れ落ちる命の方が多かった。今の俺には何も残っちゃいやしない。
だから。
｢…………。｣
だか、ら。
｢─────不死川？｣
聞き慣れた声に、反射的に振り返る。
そこに居ると気取られない接近の仕方。あぁ、こいつの悪い癖だったよな、昔から。
｢……宇髄｣
｢おいおい何だその辛気臭ぇ顔はよ。｣
ははっ、と全てを吹き飛ばすような明るい笑い声。いつもは耳に障るはずのその声も、今だけは助かったと思えてしまうのだから。
俺が来た道の先を見て、宇髄は全てを察したように押し黙った。しかし直ぐにいつもの笑顔を貼り付けて、俺の隣を歩き出す。
｢久しぶりだなあ、不死川。死んだと思ったぞ。｣
｢おいやめろ……縁起でもねえ｣
｢悪い悪い、まあ生きてて何よりだ。｣
もう返事をするのも億劫で、少しだけ俺は足を早めた。
しかし宇髄もまた俺について足を早めるから、結局並んで歩くことには変わりなくって。
｢なあ、不死川｣
｢……。｣
｢お前、結婚すんだって？｣
だなんて。この男は、人の一番触れられたくない場所に土足で踏み込んでくるのだから、達が悪い。
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柚葉(プロフ) - 一気に読ませていただきました。涙がなかなか止まりませんでした。情景を浮かべると、もう涙が溢れてしまって…。義勇さんとのやりとりも、夢主さんへの想いも、もうたまらなかったです。ありがとうございました！！！ (2021年5月3日 19時) (
レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
Rii(プロフ) - 占ツクでこんなに自然に涙が出た作品は初めてです。感動の一言では安いほどです。読んだこちらが幸せになる本当に綺麗な作品でした。これからも応援させて下さい。急な長文で申し訳ありません。ありがとうございました。 (2021年1月24日 12時) (レス) id: ae2ab4d40a (このIDを非表示/違反報告)
Rii(プロフ) - 初めまして。私も作者様と同じく最終巻の『子孫』という言葉に衝撃を受けた1人です。やっぱり同じ境遇の人いるよな、なんて軽い気持ちで読ませていただいてたのですが、読んでいくにつれて、作者様の言葉使い、ストーリー、表現力に本当に感動致しました。 (2021年1月24日 12時) (レス) id: ae2ab4d40a (このIDを非表示/違反報告)
しぃ(プロフ) - めっちゃ泣きました。感動でした。ありがとうございました(*ﾟOﾟ*) (2021年1月3日 1時) (レス) id: f715447a21 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - レモン紅茶さん» コメントありがとうございます！！お、落ち着いてください……！？笑 語彙力の寄付、有難く受け取らせていただきます^^( そんなに褒めて頂けてとっても嬉しいです！！ (2020年12月24日 22時) (レス) id: debafb75d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆき
| 作成日時：2020年12月6日 17時
