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俺は一分一秒、俺を取り巻く全てのものを空費しながら日々を生き永らえていた。
腹も減らねば何をしたいとも思わない。食欲が湧かないまま、体だけはぐったりと生存本能に従うので、しょうがないからその度に適当なものを口に入れた。
味がしなかった。生活から色が消えた。
あんなに鮮やかで美しかった自然を見ても何も思わなくなった。
ただただ水無月の陰鬱な雨が、どうにもならないからこそ余計に腹立たしくて。
生きているか死んでいるのか。夢か現かも分からぬ時を重ねた。
それでも太陽だけは正確にその経過を告げてくれるから。俺は俺の前に広がる膨大な死への時間を指折り数えて、そして死にたくなるのだ。
(…………俺はいつ死ねんだよ)
冨岡は思い残すことが消えたから、この世からも消えてしまった。
ならば俺は？もう俺を悲しむ者なんて何一つ残っちゃいない。冨岡にさえ置いていかれた俺は、もう。
｢…………殺してくれ、｣
誰でもいい。死に損なった俺をどうか殺して欲しい。
生前の冨岡に、こんなことを問われたことがある。
“自分が死ねばよかったと思ったことはあるか”
そんなこと、何度考えたか分からない。家族を亡くしたあの日も、たった一人残った弟を目の前にいながら救えなかったあの日も、そう問われたその瞬間だって。
一人は嫌だった。もう誰にも置いていかれたくなかった。だからあの時、最後の戦いが終わったあの時。
薄れゆく意識の中、｢あぁ、やっとみんなの所に行ける｣ と、そう思った。
あのまま目なんて覚めなければよかった。
そう告げると、冨岡はやはりあの顔で。けれどその声色だけは、耳触りが良かったのを嫌に記憶している。
“自分が死ねばよかったなど、二度と思うな。”
その後、冨岡は語ってくれた。自身もまた俺と同じ後悔を味わったことがあると。そして亡くなった友人から、同じ言葉を言われたと。
だからもう、死ねばよかったとは言わない。けれど死にたいとは強く思う。
未だ止む気配のない雨雲を一瞥。その重い腰をあげた瞬間。
ぐらりと、世界が揺れた。
息が苦しい。頭が割れるように痛い。指先が痺れる。
意識が遠のく。深い深い闇に引きずり込まれるように、俺は。
(…………あぁ、俺)
迫り来る床を前にしたその時。
俺の頭の中に“死”という名の大いなる闇が張り付いて。その先の見えぬ暗闇の奥に、誰かの笑顔を見た、気がした。
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柚葉(プロフ) - 一気に読ませていただきました。涙がなかなか止まりませんでした。情景を浮かべると、もう涙が溢れてしまって…。義勇さんとのやりとりも、夢主さんへの想いも、もうたまらなかったです。ありがとうございました！！！ (2021年5月3日 19時) (
レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
Rii(プロフ) - 占ツクでこんなに自然に涙が出た作品は初めてです。感動の一言では安いほどです。読んだこちらが幸せになる本当に綺麗な作品でした。これからも応援させて下さい。急な長文で申し訳ありません。ありがとうございました。 (2021年1月24日 12時) (レス) id: ae2ab4d40a (このIDを非表示/違反報告)
Rii(プロフ) - 初めまして。私も作者様と同じく最終巻の『子孫』という言葉に衝撃を受けた1人です。やっぱり同じ境遇の人いるよな、なんて軽い気持ちで読ませていただいてたのですが、読んでいくにつれて、作者様の言葉使い、ストーリー、表現力に本当に感動致しました。 (2021年1月24日 12時) (レス) id: ae2ab4d40a (このIDを非表示/違反報告)
しぃ(プロフ) - めっちゃ泣きました。感動でした。ありがとうございました(*ﾟOﾟ*) (2021年1月3日 1時) (レス) id: f715447a21 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - レモン紅茶さん» コメントありがとうございます！！お、落ち着いてください……！？笑 語彙力の寄付、有難く受け取らせていただきます^^( そんなに褒めて頂けてとっても嬉しいです！！ (2020年12月24日 22時) (レス) id: debafb75d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆき
| 作成日時：2020年12月6日 17時
