下手くそなアドリブを ページ46
.
Aとうっしーが付き合って、早2年が過ぎた今日。
彼女たちは俺たちを集めてそう言った。
もちろん皆驚いて、喜んで。時々2人をいじったりして、でもやっぱりおめでとうって気持ちが一番で。
…そんな中、俺だけは上手く笑えなくて。
皆が一言ずつ、二人への祝いの言葉を述べていく。とうとう俺の番まで回ってきた時に、俺は情けない声で｢良かったじゃん｣とだけ。
幸いなことに、それ以上のコメントを求められることは無かった。
どう頑張っても、“おめでとう”の五文字が俺には言えなかった。ほんと、強情なことこの上ないんだけど。
情けない話、俺はやっぱりAを諦めることなんて出来なかった訳で。
喧嘩する度に俺に泣きついてくるAを見て、心のどこかで二人の別れを期待していた俺がいた。
でもその度に、仲直りした二人を見てまた傷が抉られるのだ。
そして今日。
とうとうこの日が来てしまった。
二人が結婚する日が。
｢…｣
｢…｣
素っ気ない俺の態度を見て、Aも少しいたたまれなさそうに目線を泳がせる。
未だに空いた二人の間。交わらない目線。
上手く息が吸えなかった。
ただ、冷たい風が頬を掠めていくばかりで。
｢キヨは、彼女できた？｣
この人は、あっけらかんとそんなことを言ってのけるのだから。
｢…嫌味？｣
｢なっ！違うよ！｣
｢ふは、…いねーよ｣
いない。
作る気がなかった、なんて強がりに聞こえるかもしれないけど、本当のこと。
馬鹿だったからさ、俺。
この2年の間、もしもを期待してたんだよ。それなのに、君は。
｢キヨなら直ぐに出来そうなのに｣
二年前と変わらない、美しい顔。
それに相反する、俺を酷く苦しめる言葉も。
何も変わらない。
…何も。
｢…俺、好きな人いるから｣
｢そうなの？｣
｢うん。｣
｢二年前から、ずっと｣
馬鹿な俺も、二年前から何も変わってなかった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 163人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆき
| 作成日時：2020年4月25日 11時
