【ky】カーテンコールを響かせて【短編集】 (ページ32)

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経緯ページ32

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翌日、ナースさんの優しい声で起こされ一日が始まった。

どうやら私は、面会謝絶らしい。記憶喪失の人は、一度に外界からの刺激を受けすぎると良くないとの事で。

…じゃあ、昨日のあの男はなんなんだと思ったが、ナースさんにそれを告げ口することはしなかった。
せめてもの、情かな。

昨日の私は、過去の自分に興味なんてなかった。
思い出そうとすら。

けれど、彼を見て少しだけ。ほんの少しだけ、自分のことが知りたくなって。

｢…私って、｣

｢…何があったんですか？｣

記憶喪失のせいで、語彙力も吹っ飛んでしまったのだろうか。

脈絡もくそもあったもんじゃない。

そんなたどたどしい日本語も、ナースさんは優しい笑みで受け入れて、咀嚼してくれた。

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話を聞くと、私は階段から転げ落ちたらしい。
いや、うん。別にいいのだけれど。

なんかこう、もっと、ね？

自分の命をなげうってトラックに引かれそうな子猫を助けた！

…とか。

苦しみから解放されたくて自ら死を選ぼうとした！

…とか。

ドラマチックなことを予想してた私にとって、事実は見事に間抜けなものだった。

なんだよ転げ落ちるって。ギャグ漫画か。

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